「地元就職」⑤ 自己実現へ知る機会の拡大を
次代への軌跡
石巻市 次代への軌跡 近江 瞬 2019年11月2日(土) 16時00分少子高齢化で働き手の確保が困難になる中、未来世代の高校生と大学生の地元就職と定着は、より強く意識されるべきだろう。
まず小中高校の12年間では、義務教育の9年間を「多様な地元の産業に触れる期間」に位置付け、定期的な就業体験やツアーなどで保護者を含めた企業理解の機会を確保。高校では「なりたい職業を突き詰める期間」と役割を明確化したい。
受入企業側は就業体験で単に仕事を体験させるだけでなく、社員とパート、アルバイトの業務の違いや入社後のキャリア形成、利益構造などを学年に応じて丁寧に説明することが必要だろう。
例えば「花屋になりたい」という高校生がいたとして、この生徒が想像する花屋は「店頭でお花を売っている人」であり、そこには冠婚葬祭などで利益を支える花屋の姿はない。そうなれば就職をしたとしても理想との間に懸隔が生じ、離職のリスクが高まってしまう。
現在の高校生の職業選択は「知っている職業の知っている部分」で選んでいるのであり、「知らない職業」は念頭にない。本来的な意味の職業選択のためにも、12年間で段階的に「知っている職業の知らない部分」と「知らない職業」を知る機会は多く与えられてしかるべきである。
さらに就職、進学後のフォローも重視したい。特に早期離職については、原因が不明確なままであることがほとんどで、学校・企業双方のためにも改善に向けた共有を図りたい。
加えて、進学校のキャリア教育が進学に特化するのは仕方のないことだとしても、だからといって地元産業を知らないままでいい理由にはならない。大学卒業後にはやはり職業選択が待ち受けており、選択肢になり得る状況を作るべきだ。
今は一度、管外に出てしまえば、Uターンするのは多くが市職員や教職員といった公務員。産業の発展の視点でも民間が有能な人材を確保する土壌作りは欠かせない。
いずれも一機関で打開できる課題ではなく、多機関の連携で長期的なアプローチとその後のフォロー体制の構築が求められる。それは人材確保だけでなく、本当の意味での生徒の自己実現の後押しにもなる。

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