「地元就職」④ 義務教育から長期のアプローチ
次代への軌跡
石巻市 次代への軌跡 近江 瞬 2019年11月2日(土) 10時55分今のところ、働き手を求める地元企業とのマッチングや、生徒の職業選択の幅を広げるにはインターンシップが最も有効な手段の一つ。とは言え、一般科目を含めた多くの授業がある中で割くことのできる時間に限度はある。「本来、3年間で複数回できれば理想」と進路指導教諭。現実は3年間で1度、それも2―3日にとどまる。
得られる学びも受入企業や学校、生徒の姿勢で温度差が出る。受入企業は自社をアピールし、働き手を得るための絶好の機会として力を注ぎ、学校も貴重な機会に最大の効果を得るため、事前学習で生徒のやる気を高める。そうしなければ生徒は“お客さん”の立場で終わってしまう。
実際は本当に人手不足の中小企業は受入体制を整えられず、講話に人を派遣できないといったジレンマも抱えている。
県内でキャリア教育のコーディネートに取り組むNPO団体の代表は「高校の3年間でできることは限られている。小、中学校を含めた段階的な連携が必要」と指摘。今年から会員企業にインターンの協力を得た石巻商工会議所の浅野亨会頭も「人を育てることは長期戦略」と説く。
小、中学校でも職場見学の時間は設けられているが、NPO代表は「就職は意識されていない。義務教育の9年間で多様な地元産業を知り、高校では“本当になりたい職業”へのアプローチがあるべき」と提起。現在は高校の3年間に「職業選択」の過程が詰め込まれてしまっている。
こうした意識から一部では、小中学生に向けた取り組みも展開されている。震災からの復旧、復興のつち音が響く工事現場では小学生を招いた見学会で建設業をアピール。石巻地方の商工会組織では地元企業を巡るバスツアーも組み、早くから地元の産業に触れる場を作り出す。
こうした時間をかけた取り組みは保護者の意識を変えることにもつながるが、一方で関心の低い家庭もすくい上げるためには、やはり学校現場との連携が欠かせない。

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