「地元就職」 ② 偏る希望職種、流出する人材
次代への軌跡
石巻市 次代への軌跡 近江 瞬 2019年10月31日(木) 8時37分石巻管内11高校の今春の卒業者総数は1518人。この数自体も今後減っていくのは確実だ。今年4月末時点で、前年度卒業者数に占める就職者は541人であり、約半分の267人は石巻管外に就職した。管内高校で進路指導を担う教諭は「震災後に強まった地元への愛着が薄れてきている。管外の多くは仙台。やはり憧れがあるのだろう」と語る。
とは言え、ハローワーク石巻管内の新規高卒者向けの求人が少ないわけではなく、むしろ震災後は年々増加の一途をたどる。今春卒業した283人の管内就職希望者に対する求人倍率は3.33倍(943件)。希望者一人に対し、3件以上の求人があった。
進学と就職の選択を高校ごとに細かく見ると、普通科の石巻、石巻好文館、石巻西で大部分が進学。就職は実業高校で多く、宮城水産は8割、そのほかも半数ほど。唯一の市立校である桜坂は137人中54人が就職した。管内就職者数は多い順に石巻北(57人)、石巻商業(45人)、石巻工業(42人)、宮城水産(28人)となる。
先ほどの進路指導教諭は「希望職種がないために出ていくことを決めた生徒も多い」と打ち明けており、職業希望が違えば、地域を離れるしかない。それほど管内では寄せられる求人に職種の偏りがある。
全943件のうち258件と約3割を占めるのが、水産加工業や電子部品製造業をはじめとした「製造業」。次いで「建設業」が191件と多く、そこに介護事業を含めた「医療・福祉」が183件と続き、この3業種で全体の67%を占めている。だが、普段の生活で生徒が触れることの少ない職種であり、その情報の少なさから前時代的なイメージを払しょくできず、結果として希望者は増えていかない。
また、これは生徒のみならず、職業選択の意思決定で少なくない影響力のある保護者も同様。すると普段目にするなじみある小売やサービス業を選びがちとなり、多くの希望者が少ない求人を奪い合えば、そこから漏れた生徒は当然、管外にそれを求めて出ていく。

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