地方創生とSDGs ③ 復興過程で新たな価値
次代への軌跡
石巻市 次代への軌跡 山口 紘史 2019年6月21日(金) 19時09分地域は各機能を果たす人や組織、建物、インフラが集合した無生物(機械)だという考え方がある。それに従うと、地域の魅力向上には不良となったパーツを修理・交換すればいい。機能が充実した立派な図書館を建てて市民の文化度を上げ、実績ある教職員を配置して子どもの学力向上を徹底し、古い商店の代わりに大型商業施設を誘致し利便性を高めるなどすれば、まちは良くなるのだろう。
しかし現実はそうではない。客を失った小売店は廃業し、高齢者などの交通弱者は買い物に困る。シャッター街となった商店街の治安と景観は悪化し、観光客も減る。持続できない地域ではこうした事象が起こっている。
地域を構成する要素は互いにつながり、機能を補い合って少しずつ変化を遂げながら均衡を保っている。つまり地域は一つの生き物と考えるべきなのだ。
東松島市にイノベーションを起こす中間支援組織として活動する東松島みらいとし機構の大村道明代表理事は、「例えばふるさと納税も新電力事業も、地域の中で金(カネ)を回し、生み出した利益で新事業に挑戦するなど好循環を生み出さなければ地域は持続できない。SDGsのコンセプトをしっかり実現できるよう協働で動くことが大切」と指摘する。
地域に人の流れを生み持続するには、地域内で循環する独自の生態系を再生する必要がある。それはコミュニティー作りや若者が挑戦できる環境作り、次世代教育などを整えることで実現に近づける。
震災後、独自の生態系を作り、発展しているのが女川町だ。将来にわたって続く人口減少を前提に、人の流れを分散させず集約する構造を採用した。計画段階から行政と民間がひざを交え、議論を重ねて未来ビジョンを明確にしたからこそ実現できた取り組みと思う。
もう一つ、着目したいのが官民一体の復興プロセスから、カネ以外の「新たな価値」が生まれたことだ。それは行政、住民同士の「信頼」や「強固な関係」、個人の「やりがい」といった目に見えない価値。貨幣経済だけに依存しない、こうした価値こそSDGsの推進、地方創生に必要となるだろう。(山口紘史)
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