地方創生とSDGs ⑤ 目に見えない価値の追求
次代への軌跡
石巻市 次代への軌跡 石巻日日新聞 2019年6月24日(月) 17時09分地方創生は地域独自の生態系を維持することが重要であり、SDGsを用いることでコミュニティー形成、人と経済が循環していく流れを作り出すことができる。そのためにはまず行政による土台作りが必要である―。これが今回の仮説だ。地方創生は地域に明確な「未来ビジョン」がなければ成立せず、SDGsを導入しても、地域自体に「こうなりたい」という能動的な意思がなければ、効果は薄いと強調したい。
ここで2市1町が計画している総合戦略から、目指すべき将来の方向性を抜粋してみる。
石巻市は①出生率低迷の打開②人口減・高齢化が前提の支え合い体制の構築③特色を生かした産業振興と雇用の創出④首都圏との交流強化で人口流入増加。
東松島市は①新しい人の流れを作る②地域に仕事を作る③若者の結婚・出産・子育ての希望をかなえる④時代に合った地域を作り、安全安心な暮らしを守る。
女川町は①使い勝手の良いコンパクトシティーの実現②活動人口をターゲットにした担い手作り③産業再生と強化による経済活力の維持④移住定住促進に向けた環境整備⑤町民が健康で長く活躍できる意識と機会の創出。
どのまちにも共通するのは交流・関係人口増加と産業振興・雇用創出だ。いずれも地域外からの求心力を生み、移住定住につなげるためには魅力的な産業と働く場が必要と考えている。
これ自体は間違っていない。だが、それだけでは足りない。重要なのは地域にある仕事が「どう魅力的なのか」を自己分析し、広めること。地域住民がそれぞれに「生きがい」を感じながら働ける土壌を作ることだと思う。
現代社会はカネで何でも買える、物質的豊かさが満たされている時代である。一方で「関係」「信頼」など、貨幣以外の目に見えないものの価値が高い時代ともいえる。「生きがい」もその一つだ。
人の関係性が希薄で大量生産・大量消費の大都市。そんな大都市では感じにくい、目に見えない新たな価値が地域にはあふれている。
各地域、業種が持つ価値を再確認し、発信していくことができれば、それは外の人間には魅力的に映る。
挑戦したい若者、定年退職後の生き方を模索する中高年、Uターン希望者。目に見えない価値で人をひきつける。これを加味しSDGs、地方創生にまい進するべきと強く思う。
次回は(仮称)「災害公営住宅の空き問題」をテーマに7月16日―20日に掲載する。
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