石巻日日新聞

文化団体の力 ④ 展望 世代間協働の可能性

次代への軌跡

石巻市 次代への軌跡 近江 瞬 2019年6月1日(土) 9時51分
ファン獲得へ世代間連携が進む演劇界の「いしのまき演劇祭」

 今後、すべての文化芸術団体が存続していくことはおそらく困難になる。それは時代の流れであり、仕方のないことかもしれないが、同時に変化を見越した新たな体制づくりも求められる。

 石巻市文化協会の西條允敏会長は「伝統文化の継承と新しい時代に生まれた芸術文化の双方を両立していく体制が必要。世代間で分断してはいけない」とし、高齢者世代が積極的に若者たちのサポーターになることで双方の理解を進める重要性を説く。

 同時に、若い世代が取り組む大人の部活動の事務局を担う(株)街づくりまんぼうの苅谷智大さんは「『部活動』という枠組みを作る以前から若者の文化活動は潜在的にあった。今はそれがショーウインドー的に顕在化された状態」としつつ、拠点となるコモンシップ橋通りには設置期限があることから「せっかく生まれた動きを継続するためにジャンルを超えたつながりを深めることが大切」と見据える。

 さらに石巻市民大学「まなび舎」の中心となる「いしのまき人材(ひと)・地域(まち)創生会議」の松村豪太会長(一般社団法人イシノマキ2・0代表理事)は「行政でやれることには限界がある。これからは芸術文化の主体側が社会に対して存在感を示していかなければ、その活動が後世に残らなくなる時代になる」と提起する。

 ともすれば閉鎖的になりがちな文化芸術活動だが、継承と活性へ求められているのは各世代間をつなぐ情報発信であり、そのためには松村会長の言葉を借りれば「社会に対して存在感を示す」こと、つまり積極的な〝見える化〟に他ならない。

 この点で好循環を生んでいるのが震災後活発になっている演劇界。今年も11月に開催する「いしのまき演劇祭」を核に、従来の団体と新たな団体が世代を超えて協働し、新たなファンを獲得している。さらにそのファンが関係者や演者になるといった結果も生まれ始めている。

 上の世代が培ってきた地域でのノウハウと、若者世代が持つネットワークと発信力が好循環の要因。これはさらに下の世代である高校演劇部員への刺激も生んでおり、世代間協働による可能性の一端を示している。

(近江瞬)

最終更新:2019年6月1日(土) 10時42分

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