文化団体の力 ② 現状 担い手となる若者世代
次代への軌跡
石巻市 次代への軌跡 近江 瞬 2019年5月29日(水) 18時28分行政では市民の文化芸術活動を主に生涯学習の中に位置付けている。石巻市も平成29年度に、令和8年度までの10カ年の第2次市生涯学習推進計画を策定した。方針は①市民と行政との協働②市民主体の生涯学習③地域に生かす生涯学習―の3つ。具体的な施策には「ライフステージに応じた学習支援」など6項目を掲げている。
「生涯学習」と聞くと多くは高齢者を想起するだろう。実際、高齢社会の進展で生涯学習の軸となる対象はやはり高齢者であり、必然的に文化活動の最大の主体もそう。石巻市文化協会に所属する団体の会員の年齢層も60―80代が主で、西條允敏会長は「60代でも若手」と話す。
市が施策の一つとして掲げる「ライフステージに応じた学習支援」では高齢者だけでなく、成人世代、青少年など各世代への事業を明示。その上で世代間交流の促進も目指すとしている。しかし現実は将来の文化の担い手となる成人世代へは「キャリアアップ」など仕事に通じたものばかりで、肝心の文化活動とは距離がある。
では、石巻の成人世代による文化活動が下火かと言うと決してそうではない。むしろ東日本大震災後の外部人材の流入によって刺激を受けたことで盛んになっている。
その中心的な役割を果たしているのが(株)街づくりまんぼうが運営する屋台村「コモンシップ橋通り」=同市中央=だ。かつては飲食店起業希望者の挑戦の場だったが、昨年4月に改装し、新たな取り組みとして「大人の部活動」を展開。注目を集めている。
現在までに設立された部活動は14団体。写真や音楽、演劇、短歌、けん玉といったこれまでの文化活動に通じるものから、SFなど空想作品を研究する「空想科学文化研究」、フィールドワークをもとに考察を深める「文化人類学」など従来の地域の文化活動の枠にとらわれないものまで幅広く、高校生から30代を中心とした若者が担う。
また、震災後は1カ月間にわたり週末に舞台を届ける「いしのまき演劇祭」や、総合祭「リボーンアート・フェスティバル」など確実に新たな文化活動の土壌は耕され始めている。
(近江瞬)
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