文化団体の力 ⑤ 提言 若者の横断的組織を
次代への軌跡
石巻市 次代への軌跡 近江 瞬 2019年6月2日(日) 8時35分芸術文化活動の衰退は、地域コミュニティーの減衰と文化施設の〝ハコモノ化〟につながりかねない。しかし解決は活動の目的にはなり得ず、純粋に市民が文化芸術活動の魅力に触れ、仲間に加わって生まれる活性の先にこそあるものだ。
活性に求められるものは何か。私は「世代間の協働」と考える。そのための提言として、従来の文化団体の取りまとめ役を担う石巻市文化協会とは別に〝若者の文化横断的組織〟の構築を訴えたい。これは若者世代の活動が一過性の盛り上がりに終わらないための提案でもある。
これにより想定されるメリットは多い。例えば同協会との連携が個別ではなく、組織として可能となり、課題であった世代間の情報発信・共有が促される。イベントなどの場合、来場者増が見込まれ、結果的に会員獲得の糸口ともなる。
その上で行政側には地域の中学・高校文化部と連携する扉を広く開いてもらいたい。そこでは指導力や設備・資料不足など部活動が抱える課題と、文化団体が持つノウハウのマッチングを進めてほしい。これは石巻専修大学のサークルに対しても同様。今の生徒・学生は地域と関わる機会があまりにも少ない。
実際、「いしのまき演劇祭」では観劇した高校生が、翌年には出演者となることも多い。その一人である元女子生徒は「石巻にこんなに面白い大人がいるなんて知らなかった。あの経験で石巻を好きになれた」と振り返り、東京都内の専門学校で演劇を学ぶ今、「いつか私も石巻で公演したい」と言う。立派な担い手の発掘の実例だ。
教育現場では「キャリア教育」としてインターンシップなどが盛んだが、特に地方では職業だけでなく、大人の余暇を見せることも重要。そうでなければ職業だけが子どもたちの進路選択の基準となり、その豊富さで地方は都市にかなわない。石巻に充実した「余暇」があったとしても、彼らは今、それを知る機会のないままにこの土地を出てしまっている。
芸術文化活動の活発には、今ある活動の充実と将来世代への発信が鍵。その中で若い世代は活動の〝見える化〟によって上と下の世代をつなぐ要となり、各世代の扉を開く必要がある。世代を超えたコミュニティーの形成へ、文化芸術団体が果たすことのできる役割は想像以上に大きい。
(近江瞬)
次回は(仮称)「SDGsと地方創生」をテーマに6月18日―22日に掲載する。
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