財政不安 ② 現状 歳入減、歳出増の傾向
次代への軌跡
石巻市 次代への軌跡 熊谷 利勝 2019年2月15日(金) 21時56分東日本大震災から10年の石巻市の復興基本計画は平成32年度で終了し、やがて国からの特別な支援もなくなる。市が昨年末にまとめた財政見通しでは31、32年度と復興期間終了後の33年度の3カ年で82億6千万円の収支不足が生じるという。震災特需の落ち着きや人口減少から歳入環境が厳しくなる一方、高齢化による福祉関係費(扶助費)のほか、災害復旧や復興事業で新たに整備した施設の維持管理が増大してくる予想だ。
市の29年度普通会計(一般会計と特別会計の一部)決算を見ても現状では、市の財政が危機的状況にあるとはいえない。それは復興財源が入っているためで、それらは特定の目的に用途が定まった財源だ。一方、一般財源に対し、人件費や扶助費など毎年必ず支出する義務的経費の割合である経常収支比率は99.7%。比率が高いほど臨時の財政需要に余裕がないことを示しており、類似市の平均(88.8%)を上回っている。
33年度までの財政収支見通しにおける歳入は、根幹をなす市税が震災復興の回復基調から一転、31年度を境に減少する見込み。国からの仕送りにあたる普通交付税も国勢調査人口の減少などで減っていく見立てだ。
歳出では復興期間終了までの人員確保が必要。施設の維持管理費の増加は、消費税増税の影響も無視できない。少子高齢化を背景として扶助費は年々伸び、合併時の約65億5千万円に対して33年度はその2倍の額が必要になる。仮設住宅から家賃のかかる復興公営住宅への転居が進むとともに、生活保護世帯も増加している。
将来にわたって歳入は減少、歳出は増加の傾向にあり、31年度は7億1千万円、32年度は25億3千万円、33年度は50億2千万円の収支差が発生する見通し。市の貯金といえる財政調整基金は29年度末で約101億円だが、これで収支不足を穴埋めしていった場合、33年度末残高は44億円。何らかの手立てを講じなければ、貯金は数年で底をつく。
繰り返せば市の財政は、復興期間のうちはさほど困っていないが、政策的に使えるお金はあまりないということ。市立病院会計への繰り出しの増加や復興事業が市単費の通常事業になった場合、さらには大川小学校児童の遺族が市に損害賠償を求めた訴訟の行方次第では、財政見通しが一気に厳しくなる。
(熊谷利勝)
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