石巻日日新聞

石巻ロケの映画「凪待ち」28日封切前に完成報告

舞台あいさつに期待大

石巻市 教育・文化 石巻日日新聞 6月17日(月) 16時18分
地元住民と記念撮影する白石監督と香取さん(塩釜仲卸市場)

 石巻市を舞台とした映画「凪待ち」が28日に全国公開される。封切を前に13日には、最初のロケ地である塩釜市の塩釜水産物仲卸市場で地元住民向けの完成報告試写会が行われ、白石和彌監督と主演の香取慎吾さんが登壇した。「今の石巻を全国の皆さんに見ていただける素敵な映画」と香取さん。今後も全国の劇場で舞台あいさつ付き上映会が予定されており、石巻での実施も期待できそうだ。

 香取さん演じる主人公、郁男は日々を無為に生きるギャンブル依存の男。恋人とその娘とともに、彼女の故郷である石巻市で再出発しようとする。平穏を取り戻しつつある中、恋人が何者かに殺害され、郁男の身にあらゆる悲劇と理不尽が降りかかる、という物語だ。

 メガホンを取ったのは「孤狼の血」など話題作を連発し、近年の映画賞の常連となった白石和彌監督。ロケは昨年夏に約1カ月間、石巻市を中心に東松島市と女川町でも行った。

 完成報告は仲卸市場内の特設会場であり、地元の水産関係者約80人が参加。白石監督がはじめに登壇し、サプライズで香取さんが登場すると客席から黄色い声が上がった。

 白石監督は「震災からの復興は半ばながら、話題にされることが少なくなった今、東北を映画で切り取りたかった」と作品に込めた思いを強調。香取さんは「ロケ中は皆さんの温かい言葉で支えられた」と感謝を込めた。

 同作の脚本は日本アカデミー賞優秀作品賞の「クライマーズハイ」などを手掛け、これまでにも東日本大震災が題材の作品を執筆してきた加藤正人さんのオリジナル。出演はほかに西田尚美さんやリリー・フランキーさんなどが名を連ねている。

 公開を前に地元でも期待感が高まっており、上映劇場のイオンシネマ石巻の田原正和総支配人は「前売り券は非常に好調な売れ行きだ」という。

 また、書店で扱う多くの書籍でも同作の関連記事を掲載。このうち香取さんが表紙でロケについても多くの言及がある「キネマ旬報」は、石巻市内の各書店で普段より早く在庫切れになっている。

傷負ったすべての心に 主演の香取さんと白石監督 記者会見で一問一答

石巻での撮影や作品について語った
石巻での撮影や作品について語った

 完成報告会で、主演の香取さんと白石監督による記者会見での一問一答は次の通り。

 ―作品に込めた思いは。

 白石 震災後も世界中で悲しい出来事があるが、傷を負ったすべての人の心に〝凪〟が訪れるようにと思いを込めた。多くが血なまぐさい僕の作品の中で、一番優しい作品になっている。

 ―ロケ中に感じたことは。

 白石 撮影中も地域の人に話を聞くようにしていた。教わることが多く、復興に終わりはないと感じた。国を挙げた東京五輪も控えるが、震災はまだ終わっておらず、そこに生きる人がいることを残さなくてはならない。

 香取 震災の直後にも東北は訪れた。東京で過ごすと年々、震災の報道を目にする機会が減ってくる。復興した部分もあるが、宮城の皆さんの話を聞くと、まだまだにも感じた。復旧工事の現場の作業員も、「もう何年も工事をしているよ」と。

 まちで震災について尋ねても、写真を見せて話してくれる人、少し目を背ける人とさまざまだった。心への刻まれ方も人により違うのだと感じた。

 ―撮影で印象に残った出来事は。

 香取 差し入れしてくれた女性が笑顔で、でも涙を流しながら「震災で家族も親戚も皆亡くなっちゃったの。撮影頑張ってね」と言ってくれた。その思いに応えるためにも頑張ろうと思えた。

 ―映画という〝娯楽〟で震災に触れる難しさはあったか。

 香取 震災の要素を含む映画の撮影に、地元の人がどんな思いを抱くかと不安もあったが、本当に温かく迎えてくれた。「ここで映画を撮ってくれることがうれしい」と言ってくれる人にも会えた。

 白石 撮影で路地に香取さんがいても騒ぎにならず、遠目で応援してくれた。作品においては、香取さんの存在自体がエンターテイメント性の多くを担ってくれおかげで人間ドラマに力を注げた。

 ―監督から見た俳優・香取慎吾の印象は。

 白石 日本のトップ俳優。映画におけるあらゆることを感覚で理解している。撮る側として心強く、今作は香取さんあってこそ完成した。劇中に香取さんの笑顔がほとんどないのが心残り。次は笑顔を撮ってみたい。

 ―石巻にメッセージを。

 香取 本当に感謝している。辛い場面も多く、僕自身にとっても人生の新しい道を歩み始めてから初の主演映画。力んでしまう部分もあったが、皆さんのおかげで役を生きられ、素晴らしい監督のもとで作品を完成させることができた。

 僕の役は〝ろくでなし〟。生き方の方向が定まらない中でも生きなくてはならないこと、そしてそこからいかに光を目指すのかを感じとってほしい。

タグ:凪待ち
最終更新:6月17日(月) 16時18分

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