石巻日日新聞

コメの未来 ② 現状 大規模化する専業農家

次代への軌跡

石巻市 次代への軌跡 石巻日日新聞 2019年5月8日(水) 21時54分

 東松島市赤井の農家は約半数が専業だ。以前は兼業農家が主体だったが、高齢化で農地の集積化が進み、兼業は減少した。

 赤井に住む専業農家の男性(62)は、所有する25ヘクタールの農地でコメを栽培。ほかに大豆が8ヘクタールあり、それで生計を立てている。品種はひとめぼれとササニシキが中心だ。

 長男と2人で農地を維持しているが、田植えなどの繁忙期はシルバー人材センターなどに手伝いを頼む。昔はずっと狭い農地だったが、地域の高齢化で田んぼを手放す農家が増え、年を重ねるごとに田んぼの管理を請け負うケースが多くなっているという。

 米価が高値で推移していた40年ほど前は3ヘクタールもあれば家族で生活ができていたが、今は20ヘクタール以上を所有していないと暮らしもままならないという。でも農地の拡大はそう簡単ではない。

 人手が足りなくなる部分は機械化して対応するしかないため、経費が多くかかる。稲作は広い面積で収入を上げる土地利用型農業であり、後継者として農業を引き継ぐ形であれば別だが、新しい担い手として始めるには農機具などの機械や施設に投資が必要だ。

 農地が大規模になると必然的に機械が不可欠となるため、トラクターや貯蔵施設などの設備投資に数千万円の資金を要す。リース制度などで負担軽減もできるが、それでも多くの担い手はしり込みしてしまうという。

 男性は時間をかけて設備投資をしてきたため、集積化で徐々に広がった農地に対応できていたが、一般論で「急激な拡大に対応することは、資金的に非常に難しい」と指摘する。

 農地は長男に引き継ぐ予定で順調に進んでいるが、周囲では後継者のいない70代以上の農家が多い。「5年後や10年後にリタイアしたときが心配」と心境を吐露。「この地域の田んぼを守っていくのは大事なこと。地域全体で担い手を育てていくしかない」と地域の未来像を模索する。

 東日本大震災で被災した石巻地方の沿岸部では、農地復旧などで国の支援が入り、農家の法人化が加速。内陸部もこうした動きが進んでおり、規模を拡大していく農業の中で個人経営のコメ農家は岐路に立つ。

(渡邊裕紀)

タグ:コメの未来
最終更新:2019年5月9日(木) 9時10分

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