コメの未来 ③ 対応 海外輸出で販路拡大
次代への軌跡
石巻市 次代への軌跡 石巻日日新聞 2019年5月9日(木) 18時10分国内農業の屋台骨である農業協同組合(JA)は、生産力増進と農業者の経済的、社会的地位の向上を目的としており、加入者の大半がコメ農家。JAいしのまきは平成13年に1市9町の10JAが合併し誕生した。「新たな農業観の確立と個性ある地域農業づくり」を掲げ、当時で宮城県内3位の規模となる巨大組織となった。
その後の農協再編で29年には県北部地域の8つのJAによる合併推進協議会が立ち上がり、栗っこ(栗原市)、いわでやま(大崎市)、加美よつば(加美町)、あさひな(大和町)、古川(大崎市)、みどりの(美里町)、南三陸(南三陸町)、いしのまき(石巻市)が参画。実現すれば、コメ販売高で全国1位となる超巨大組織が誕生する予定だった。
しかし、29年12月にいしのまきが脱退を表明。合併の条件や新JAの組織体系、事業運営体制の中では、組合員へのメリットを最大限に発揮できないことが離脱の理由だった。
いしのまきは合併を見送って自己改革の取り組みを加速させ、販路拡大で海外へのコメ輸出を進めた。29年産ひとめぼれは台湾とシンガポールに輸出され、好評を得ている。
施設整備も進め、JAいしのまき管内では最大級の「いしのまき中央カントリーエレベーター」を同市鹿又に新設した。収穫米の貯蔵と乾燥を行うのは従来の施設と変わらないが、農林水産省の農畜産物輸出拡大整備事業に合わせて建設されており、海外輸出を視野に入れた施設だ。
真空包装や窒素充填設備もあり、輸出した際の長期品質維持にも対応。カントリーエレベーターで白米を真空包装し、海外輸出するのは国内初の試みという。30年産米からは施設をフル稼働させ、輸出量を142トンまで増やす考えだ。
輸出拡大でコメ農家の所得向上を目指す取り組みは、世界で最大の市場である中国を開拓できれば恩恵は計り知れないが、競争は激しく、入り込む余地を探すのは容易なことではない。市場でいかに石巻産米の持つ〝高品質〟を打ち出し、引き付けられるかが鍵となる。 (渡邊裕紀)
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