石巻日日新聞

「水産と観光」 ② 産業拠点と消費地分離

次代への軌跡

石巻市 次代への軌跡 阿部 達人 8月21日(水) 18時06分

 水産を軸に「見る(体験する)」「買う」「食べる」をそろえた観光地。これは市民を含む消費の場と水産業の拠点が、空間的に一体となっている場合に成立しやすい。

 石巻市は以前、漁港が旧北上川河口にあったことで、中心市街地の歓楽街化を後押しした。しかし、漁船の大型化への対応で昭和49年に現在の石巻漁港が完成。市を支える水産が成長する上で必要なことだったが、消費の場と水産業の拠点に距離が生じた。

 単純な話、テーマパーク的な拠点を設ければ、漁港周辺もにぎわうようにも思う。実際、過去には観光を意識したテコ入れ案が持ち上がったこともある。また震災後は漁港周辺の再整備で、生鮮品などを扱う観光施設の設置を求める声もあったが、復旧を基本とする中、実現には至らなかった。

 やはり商業的な実績の少ない水産加工団地内へのにぎわい拠点の整備はリスクが大きく、行政も民間も手を出しにくいだろう。

 とはいえ、復旧の範囲内で石巻魚市場には荷さばき場が見渡せる見学者通路、水産関連事業者の福利厚生・研修を目的とする市水産総合振興センターと観光資源になり得る施設が新設された。

 そしてカネを投じた拠点整備以上に地方の観光振興で重視されているのは、既存の観光資源に価値を見出しての活用。石巻観光協会や石巻圏観光推進機構も、水産を重要な観光資源として捉えており、水産加工場の見学などの体験を押し出していきたい考えがあるという。

 実際に大人数での見学の要望もあるが、震災後の水産加工業者の多くは人手不足であり、さらに業務の繁忙期などの条件を考えると柔軟な受け入れは難しい。結果として水産の体験型観光を強くアピールしきれない歯がゆさがある。

 このほか、多様な魚種が水揚げされることが石巻の水産業の強みだが、一方で特定の魚種に特化したPRが図りづらいことも以前から指摘されてきた。

 種々の課題を抱えつつも、近年は複数の民間事業者が手を結んだ自主的な活動が魚町への誘客で一定の成果を上げており、水産を軸とした今後の観光にヒントを与えている。

タグ:水産と観光
最終更新:8月26日(月) 16時26分

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