石巻日日新聞

暖流寒流 コラム

石巻市 コラム 石巻日日新聞 2018年10月22日(月) 15時36分

 90歳で大往生した浮世絵師葛飾北斎の最期の言葉は「あと5年長生きできたら本当の画工になれたものを」。生涯を〝描くこと〟にささげた美術家の強い創作意欲を感じる。この人も同じ思いだったのではないか。石巻、いや東北を代表する洋画家の浅井元義氏が15日に80歳で亡くなった。

 幼少時から絵が好きで、大学卒業後は美術教師の道を進みながら創作を続け、作品発表も積極的に行った。昭和38年の本紙に油絵展を開催した記事が載っている。当時はまだ25歳だがすでに地域で知られる存在だったようだ。

 40代以降は石巻スケッチシリーズとして人々が何気なく目にするものを繊細なタッチと柔らかい色調で描いてきた。第6集まで終えて次のテーマは「三陸海岸」を予定していたが震災でとん挫。多くの知人を亡くし、無気力の日が続いた。

 そんな中、周囲から「失われた景色をもう一度見たい」との声が高まり、画集「ふるさと石巻・思い出の風景たち」を平成24年に自費出版。それが第7集になった。

 「あと十年生き延びて、シリーズ第8集『三陸海岸』に挑戦したい」と語っていた。かなわぬまま旅立ったのはファンとして残念だが、ご本人は空の上で絵筆を握っているかもしれない。合掌。

(平成30年10月22日)

タグ:浅井元義
最終更新:2018年10月22日(月) 16時28分

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