薬事理解 ③ 対応 地道に啓発活動展開
次代への軌跡
石巻市 次代への軌跡 阿部 達人 2019年3月14日(木) 23時08分「気軽に相談できる薬局」は、少子高齢化を背景に国や日本薬剤師会が求める理想像。その実現には薬剤師が地域住民と積極的に顔を合わせ、身近さと役割を知ってもらうことが必要だ。
全国的に主だった取り組みでは、厚労省など主催の「薬と健康の週間」(毎年10月17日―23日)で、各地の薬剤師会が自治体などと協力して住民啓発を展開している。
石巻薬剤師会はこの時期の「石巻市民食育健康フェスティバル」でブースを出展。無料健康相談などを行い、アドバイザーとしての役割を広める。
時期を限らず、町内会の健康講話などへの講師派遣も行っており、そうした際にも気軽な薬局の利用を呼び掛けている。しかし、薬以外のテーマについても語れることや、講師活動自体があまり知られておらず、実施回数は決して多くない。
活動に取り組む薬剤師たちによると、これらの場では参加した市民から意見を求められ、薬剤師の仕事に理解が深まるなど、前向きな反応が見られるという。近年は行政などとの連携で啓発の機会が増えており、地道に周知を広げている。
震災に伴い他の地域以上に顕著に進む石巻の少子高齢化を考えれば、薬剤師会が組織立ち、さらに積極的な啓発活動に取り組むべきとも思えるが、そう簡単ではない。
同薬剤師会の登録薬剤師は約200人。地域の医療環境を支える上では人員は不足してはいないが、それに加えた啓発活動が展開できるかといえば難しい規模感だ。
組織ではなく、薬局単体の工夫に目を向けると、平成28年に開設した「さくら調剤薬局石巻駅前店」=同市清水町=は喫茶店を意識した内装で無料のコーヒーも提供。立ち寄りやすい空間づくりに力を入れた。
同薬局の菅原恵美子管理薬剤師(36)は「地域の人がコーヒーを2、3杯飲んで滞在するうち、体調に関する話題が出ることもある」と一定の効果を実感。「さらに入りやすいような看板でも置けばいいのでしょうけど」と課題を挙げる。
個々の薬局で考えれば決して人員に余裕があるわけではない。そうした中で、薬剤師が従来業務に加え、費用対効果が見えにくい啓発活動に取り組むのは負担となる。
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