復興公営住宅の空室 ① 交流なく孤立の懸念
次代への軌跡
石巻市 次代への軌跡 熊谷 利勝 2019年7月17日(水) 8時51分石巻市が東日本大震災で住まいを失った人向けに用意した災害(復興)公営住宅は、被災市町で最も多い4456戸にのぼる。すでに200戸ほどの空きが生じており、既存の市営住宅と同じ要件で順次、入居者を募っている状況だ。人口減少が進めば、空き室はさらに増える見通し。維持管理が課題となるほか、入居者の孤立が懸念される。
「エアコン(の室外機)がない部屋はみんな空き家だよ」。1、2、3、4、5、6…その数は片手で収まらない。
ここは市内中心部に近い30戸ほどのある復興公営住宅。完成して2年余り経つが、周辺は道路整備や区画整理事業が続いており、被災の跡が色濃く残る。徒歩圏内にスーパーはなく、不便といえば不便だ。
空きが目立つのは2LDKや3LDKなど、子どもがいる世帯向け。実際、この住宅に子どもはほとんどおらず、隣の公園もあまり使われていないらしい。クローバー(シロツメクサ)で覆われているが、元は芝生の公園だった。
「空き室が多くて困ること…ないね」と入居する高齢男性。震災までこの周辺に自宅があり、以前からの住民は知っているが、公営住宅にはよその地区から来た人が多い。団地会はあっても、共益費を集めるだけの会だ。「隣と交流がないから、住んでいる人がいる部屋でも空き家でも同じだよ」。
空きが多いのは、この近くの復興公営住宅も同様。入居者で町内会の会長を務める男性は「団地にコミュニティーがない。みんなで草取りをやるにしても出てきてもらえず、町内会の住民に手伝ってもらっている」といい、交流のあった仮設住宅の暮らしを懐かしむ。男性は「復興公営の扉は厚い。仮設住宅ごとの入居ならよかったのに。もう少し家賃が安ければもっと入居するのでは」とも述べた。
市は低所得者の家賃を独自に20年間低減する施策を講じており、入居11年目から段階的に引き上げ、21年目に通常額となる。空き家が増えれば当然、市の家賃収入は減り、入居者が負担する共益費は増える。(熊谷利勝)
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