ペンと紙で伝える事実 代表取締役 近江弘一
石巻市 社会 石巻日日新聞 2019年7月3日(水) 18時52分未曾有の被害が出た東日本大震災から翌年の2012年10月、当社は創刊100周年を迎えました。そして震災の時に6日間発行した手書きの壁新聞である「号外」を展示した震災資料館「石巻ニューゼ」を開設したのが同年11月1日です。
創刊100年、紙齢3万号という長い時間の中には、日本という国そのものがさまざまな時代のうねりに踊らされてきたことは、先人たちの生き様そのものがつないだ東北にある小さなまちの地域紙「石巻日日新聞」の歴史にも大きく映し出されています。
大正元年に石巻湊で酒造会社を営んでいた山川清が、地域の政治・社会・文化の各方面における民本主義の発展、自由主義的な運動の興隆を目的に社会貢献事業としての一面を担って創刊したのち、経営的な困難を政治力、経済力などによって事業そのものを担うべく経営者を代えてつなぐことで生き延びてきました。
しかし、第二次世界大戦が勃発して政府による情報統制が行われるようになると一県一紙政策の中、紙の配給が止められ、廃刊に追いやられました。しかし、それでもしばらくは記者がわら半紙に手書きで記し、新聞として回覧したと語られています。
「地域の回覧板たれ」です。
なにがそこまで先人たちを奮い立たせたのか、なぜ、ペンを納めなかったのか、それは、東日本大震災が来るまで考えることはありませんでした。
2011年3月11日、私たちはまさにすべてを失ったと感じ、呆然としました。その時に気づいたのが、自分たちにできることで地域を守ろうとする石巻日日新聞としての強い意志の存在でした。
「ペンと紙さえあれば、伝えられる」
3月12日から17日までの6日間、号外として手書きの壁新聞で被災した地域に情報を出し続け、紙齢をつなげることができました。
創刊100年、紙齢3万号は大正、昭和、平成、令和と時代とともに、そして、時代に翻ろうされてきた地域の生き様を映してきたと言えるでしょう。
「石巻日日新聞」がつないできたこの地域への思いは、これから先へも紙齢を重ね、紡いでいきます。
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