紙齢つないで3万号 情報過多の時代こそ「新聞」
地域の話題これからも
石巻市 社会 石巻日日新聞 2019年7月3日(水) 18時51分石巻日日新聞社(近江弘一社長)が発行する日刊夕刊紙「石巻日日新聞」は3日、紙齢3万号を迎えた。紙齢は1面左上の欄外に記載されている通算発行号数。大正元年の創刊以来、戦争と不況を潜り抜け、東日本大震災では発行危機に陥ったが、手書きの壁新聞を作って情報を届け続けた。幾多の困難の中でも紙齢を途切れさせなかったのは、新聞人としての使命に他ならない。今や情報過多な時代であり、どの情報に頼るのかは重要。石巻日日新聞はこれからもきめ細かな取材と正確さ、地域に根差した話題を提供し、愛する地域を未来の笑顔につなげていく。
本紙は大正元年10月1日に初代社長の山川清が「東北日報」の名で創刊。翌年には「石巻日日新聞」と改称した。昭和15年には戦争の長期化による物資不足で一県一紙の新聞統制が敷かれ、本紙は同年10月31日に紙齢第8684号で発行を休止した。
戦後の混乱が続く中で、本紙は昭和23年12月1日に復刊。8年ぶりの紙面は復刊号とせず、第8685号として再び創刊時からの紙齢を刻み始めた。28年9月には1万号の金字塔を達成。その後も時代の変化や多様性に伴って紙面に厚みを持たせ、社屋も建替えながら発展を遂げてきた。
昭和61年5月31日に紙齢2万号となり、当時の特集面では「時代を映す鏡」として本紙の歩みを振り返り、市民生活に密着したローカル紙を強調。間もなくして時代は平成を迎え、インターネットの普及は新聞離れを加速させた。情報過多の時代では一人一人に情報の信ぴょう性を見極める力が求められるようになった。
SNS上では無料で無数の情報が錯そうしているが、有料の新聞は記者が取材し、裏付けが取れた事実を記事に起こす。平成23年3月11日の東日本大震災後は、石巻市でも多くの虚報(デマ)が広がり、混乱を招いたことは記憶に新しい。
情報社会では投稿内容の真偽に関わらず瞬時に拡散され、投稿者が社会的非難にさらされることもある。平成は便利さゆえにネット情報に踊らされ、判断を迷わせた。情報の信頼性はあっても速報性で劣る新聞。本紙は生き残り策として分析や深掘りのスローニュースに力を入れた。
連載中の「次代への軌跡」は、若い記者が独自の視点で地域課題を取材し、対応や展望を論じながら最後に提言を行う5回連続シリーズ。週末掲載の「ズーム&ワイド」は暮らしやスポーツ、福祉などに着目した密着取材で住民に寄り添った記事を届けている。
新たな時代を迎えて本紙は大正、昭和、平成、令和と4つの元号をまたぎ、震災で新聞発行の危機に直面しても再起を図って紙齢をつなげた。情報を発信するだけでなく、地域課題を読者とともに考え、未来を切り開くことが命題。次の4万号に向け、石巻地方の今を伝え続けていく。
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