まちづくりにつながる力 提言「次代への軌跡」22日から連載開始
石巻日日新聞社 代表取締役社長 近江 弘一
石巻市 社会 石巻日日新聞 2019年1月21日(月) 17時27分配信昭和の時代のまちのぎゅうぎゅう感は、家も人も商いも全てが、近くでぶつかり合い、大きなエネルギーと一体感があったと思う。
子どもたちは、その生活の中で毎日大人たちの生き方を見て、成長に見合った知識も体で吸収できた。全てがアナログだったけれど経済、生活、教育、医療などが集まっていた。あれこそがまさにコンパクトシティーではなかったか。
今は、震災による居住環境の変化や移転が新たなコミュニティの創生や再生の難しさを浮き彫りにしている。もちろん、その中で育つ子どもたちの教育環境の変化も生活と切り離すことはできない。
石巻日日新聞社では、震災前から中学生の職場体験を毎年数校受け入れている。朝の8時半にわざわざあいさつにやって来る生徒たちは照れくさそうでもあり、凛々しくもあり、一人一人の姿には大人に向き合う時の一生懸命さが素直に伝わってくる。
だが、体験に来た5人のうち3人の家庭では新聞を一切購読しておらず、親も読んでいないという。
全国紙もさることながら、地域紙も目に触れることがなければ、子どもたちは自らが生活する地域で何が起きているのかを知らない。そして震災後の同世代による地域活動や考え方などを知らないまま、まちを離れていく。これでは地元を愛し、地元で暮らす考えに遠く及ばないだろう。
近年、少年犯罪が多発している。新聞でも多く報じているが、なかなか減らない。原因の一つには、子どもやその親たちの世代が新聞を読んでいないこともあるように思える。新聞にはその時代特有の犯罪を伝えることで新たな被疑者、被害者を作らない役割もあり、地域特有の危険領域を知ることもできる。
さらに震災後は大規模な公共復興工事に伴う社会インフラの拡大、全国的な人口減少、そして労働力不足など地域における多くの課題が将来的な不安をあおる。では、新聞は次の世代につながる今をしっかりと考え、伝え、わかりやすく地域の課題を知らせているだろうか。
もう一度考えたい。
これからのまちづくりに必要な世代を育てるのは、間違いなく今起きている課題の共有であり、その軌跡である。
ネイティブアメリカンには「この大地の恵みは、先祖からの頂き物ではない。子孫からの預かりものだ」という教えがある。同じくして、石巻日日新聞社のスローガンも「愛する地域を未来の笑顔につなげます」としている。
22日から始まる連載は、地域の今を未来への軌跡の起点としてとらえ、各分野における課題と思われる事象について、記者一人一人が向き合い、読者の皆様と一緒に考えていくきっかけにしたいと思います。30歳台という次を担う世代の記者たちが中心となり、今困っていること、将来困るだろうと思うこともしっかり伝えていきます。
この連載に終わりはありません。
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