石巻日日新聞

人権弁護士 布施辰治 出身石巻で没後66年碑前祭

国境またいで功績伝承

石巻市 社会 石巻日日新聞 2019年9月24日(火) 8時33分
来賓あいさつする駐仙台総領事館の朴総領事

 石巻(旧蛇田村)出身の人権弁護士・布施辰治(1880―1953年)を顕彰する市民有志の会は14日、市内あけぼの南公園にある顕彰碑前で、没後66年の命日(9月13日)に合わせた碑前祭を行った。韓国や市の関係者を含めた約50人が参列し、国籍に関係なく一貫して弱者の側に立って弁護した辰治の功績を伝えていく決意を新たにした。

 碑前祭を行ったのは、昨年の没後65周年に演劇などを企画した市民ら有志を中心に今年5月に設立した「布施辰治を顕彰する会」。会長の松浦健太郎弁護士が「昨今は物々しい社会情勢であり、布施辰治の人生を学び直す意義がある。子どもたちの育ちにも有意義になるよう顕彰したい」とあいさつした。

 辰治は1万6千件に及ぶ弁護士活動を行い、社会的弱者の救済に奔走。特に植民地統治下の朝鮮で独立運動家の弁護を無償で引き受けたことから「日本のシンドラー」とたたえられ、2004年(平成16年)に日本人初の韓国建国勲章を受章している。

 こうした縁で駐仙台総領事館の朴容民総領事が来賓出席し、「受けなくてもよい圧迫を受けても信念をまげない人はまれ。顕彰するのは日本、韓国でなく人類という共同体のメンバーだから」と辰治に敬意を示した。その上で「韓国は学校で辰治を教えておらず知らない人が多いが、人類の一人として顕彰に努力したい」と述べた。

 その後、公園隣のいしのみなと教会で、宮城の偉人を紹介する県教委の副読本「未来への架け橋」で辰治のページの執筆を担当した東浜小学校教諭の佐藤孝幸さん(47)の話があった。転任前の蛇田小で副読本を使った授業をした佐藤さんは「児童から弱い人、困っている人を助けたいといった感想を書いており、将来、自分たちの生きる糧になってくれると信じている」と語った。

 顕彰する会は命日前後の碑前祭のほか、(仮称)石巻市複合文化施設の博物館での資料展示と副読本の授業での活用を働き掛けていく方針。辰治の親族である蛇田の布施東吉さんは「今までにないくらい碑前祭に人が集まった。顕彰していただき光栄」と感謝していた。

最終更新:2019年9月24日(火) 8時33分

新着記事