石巻日日新聞

口笛書店・文化豊穣ゼミ 小説家の西加奈子さん

「書くことは私の幸せ」

石巻市 教育・文化 石巻日日新聞 2019年9月20日(金) 9時54分
日野さん(左)が西さんに小説が生まれる瞬間について聞いた

 大手出版社、幻冬舎元編集長の日野淳さんが地元石巻市に立ち上げた「口笛書店」の創立記念企画第2弾が14日、石巻市中央のIRORI石巻で開かれた。イシノマキ2・0と協力した「文化豊穣ゼミナール」として開催。著名人を招いた公開インタビューであり、日野さんが編集者時代に担当した小説家の西加奈子さんが登場。「小説はいつ、どこで生まれるのか」をテーマに大人気作家の秘密に迫った。

 日野さんは幻冬舎時代に小説2冊の編集を担当し、特に平成23年に発行した『漁港の肉子ちゃん』は東日本大震災前に西さんが石巻市と女川町を旅したことをきっかけに書かれるなど、石巻地方との縁も深い。インタビューでは自らも小説を執筆中という日野さんにとっても関心の高い小説の成り立ちについて語られた。

 西さんは小説の展開で「作家によって違うが、私は筋道を決めずに書く。小説の種が頭に残っており、そこから『なぜ、なぜ』と考えていく」と説明。長時間を要す執筆作業では「書くことは私の幸せ。楽しくないし、しんどいこともあるけれど、どんな時もずっと考え続けている。その遅さと抑制が私に向いている」と語った。

 書き進めていく時の感覚では「よく『登場人物が勝手に動く』と言われるが、限りなくそれに近い。自分のコントロールの外に小説があることで、自分自身でも驚きがあり、面白い」と強調。意識していることは「悩んだときはたやすい道を選ばない」「簡単な言葉に頼らない」とした。

 最後にこれからが問われ、西さんは「歳を重ねると世界と自分の境界が淡くなり、気になることが増えた。まだ知らない自分から出てくるものを楽しみにしたい。そのためにもいろいろな本や人、場所に出会っていきたい」と語っていた。

 口笛書店では年内にもう一度、同ゼミナールを開く見込み。

最終更新:2019年9月20日(金) 9時54分

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