今季サンマ 異例の不漁 女川ゼロも収獲祭敢行
「秋の味覚」いずこに? 魚群南下は来月以降
女川町 政治・経済 石巻日日新聞 2019年9月20日(金) 9時32分女川港には、9月半ばを過ぎても秋の味覚「サンマ」が水揚げされていない。20日まで入港がなければ記録的不漁の一昨年、東日本大震災の影響があった平成23年を含め、少なくともここ30年間では最も遅い。関係者は日本沿岸への来遊が増えるとされる来月以降に期待を込めており、不漁でも29日に恒例の「おながわ秋刀魚収獲祭」を開き、女川ブランドのサンマを消費者に届けていく。
全国の年間サンマ水揚げ量は、しばらく20―30万トンで推移。ここ数年は減少傾向にあり、平成27年の11.2万トンから29年の7.7万トンまで3年連続で過去最低を更新。女川港も27年以降は目標ラインの2万トンを超えず29年は約9千トン、昨年は約1万5千トンだった。
今季のサンマ漁は小型が8月10日、大型は20日に解禁。一般社団法人漁業情報サービスセンターによると、北海道を中心とした10日までの水揚げ量は全国で約2千トン。豊漁時なら1日で揚がる数量であり、過去との比較では昨年の16%、一昨年の22%にとどまる。
道東沖の漁で、まとまった数量が獲れれば女川港を含む本州にも揚がる。例年は遅くとも9月下旬、30年間で最も後ろ倒しになった一昨年でも20日に初水揚げがあったが、今季は今も第一便が来ていない。
国立研究開発法人水産研究・教育機構の漁期前調査でも、8月下旬―9月中旬の漁期初めは例年にない不振と予測。魚群が極めて遠くにあり、現在の主な漁場は北海道沿岸でなく公海となっている。
同調査結果では9月下旬以降にサンマの来遊量が増えるが、昨年より少ないという。同センターは「三陸沖に魚群が南下する10月下旬以降も、漁場は沿岸をかすめるように沖合側を通るだろう」と見通す。
今季のサンマは高値傾向で、サイズ、脂も例年と比べるといまひとつ。石巻市内のスーパーの鮮魚担当者は「今季の生サンマの店頭価格は1匹198円―298円。やはり女川の水揚げ品は引き合いが強いが、今は大半が仙台市場から仕入れた一回り大きい昨年の冷凍ものを安く販売している」と話す。
こうした中、県は18日に県石巻合同庁舎でサンマをテーマに「みやぎ水産の日」イベントを開いた。予定していた生鮮サンマの発送受付は行わなかったが、「季節の魚という意識は途絶えさせないようにしたい」と県担当者。出展した女川町の水産業者はサンマ加工品など自社製品を押し出した。
また、29日には女川町の一大行事「おながわ秋刀魚収獲祭」が控える。自らも水産加工を営む阿部淳実行委員長は「厳しい状況でも女川ブランドのサンマを消費者に発信していく。地域の食文化をつなぐ上で、中止の判断はない」と強調する。
当日、炭火焼などで提供するサンマに今季の生鮮を使うか、昨年の冷凍在庫にするかは漁模様と水揚げ品の質を見て判断する。阿部委員長は「女川のサンマを扱う技術は高く冷凍技術もその一つ。祭りはそれを伝える機会であり、どんな形であれ最高のもてなしをしたい」と語っていた。
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