ハリストス正教会堂が復元 8月2日から一般公開
流失免れた〝奇跡〟の文化財 街なか誘客と活性化へ
石巻市 教育・文化 石巻日日新聞 2019年7月30日(火) 20時28分石巻市指定文化財で、東日本大震災の津波で被害を受けて復元工事が行われていた中瀬公園内の旧石巻ハリストス正教会教会堂が、8月2日から一般公開される。翌日からは多くの来場が見込まれる総合芸術祭リボーンアート・フェスティバルが開催されることもあり、街なかの誘客と活性化に役立てる。30日には、関係者によるオープニングセレモニーがあった。
同教会堂は、139年前の明治13年に千石町に建設された国内最古の木造教会の一つで、2階建て延べ床面積166平方メートル。昭和53年の宮城県沖地震で被害を受けたが、歴史、建築学的な価値が認められ、市民団体が昭和55年に中瀬に移設、復元した。同年に市に寄贈され、文化財指定を受けた。
平成23年の震災で大津波が直撃したが、奇跡的に倒壊を免れた。市は26年に解体し、翌年に現在地での復元を決定。29年に復元工事に着手し、昨年9月に完了していた。
建物を真上から見た平面が十字架型で、八角塔状の正面外観はそのまま。明治以前の伝統的な技法を用いた疑似洋風建物といえ、1階の畳敷きの居室と集会室も再現している。至聖所などのある2階も原状復旧し、イコン(聖画)が飾られている。今後、展示品を増やしていく。
復元では流失せずに残った部材の大部分を再利用。移設時にモルタルに変わった壁は、しっくいに戻して創建時を再現した。また、浸水への備えで地盤の高さを約2.2メートルにまでかさ上げした。事業費は約1億1千万円。市民からの寄付金約4500万円は、今後の外構工事に活用する。
旧北上川の中州である中瀬は令和7年度の完成を目標に全体を公園整備する計画で、来年度までに盛土などの造成が行われる。当初は周辺の造成後の公開を予定していたが、寄付した市民の要望もあって前倒し、仮設スロープや説明板を整備した。
オープンセレモニーには関係者ら約40人が出席し、亀山紘市長が「支援をいただいた皆さんに感謝している。復興のシンボルとして、歴史と文化を知る機会となり、郷土愛を育む場所となることも期待している」とあいさつ。テープカットが行われ、関係者向けの内覧も行われた。
被災しても建物が残ったことから、市は復興のシンボルとして保存活用していくことで市民の心のより所とする。隣接の石ノ森萬画館をはじめ、中央の観光拠点であるいしのまき元気いちば、同じく市文化財となった中央の旧観慶丸商店と人の流れの動線を引くことで、街なかの活性化につなげたい考えだ。
当面、市管理で隣の萬画館に合わせて火曜日が原則休館。観覧料は無料で、開館時間は午前9時―正午、午後1―5時(11月―3月は4時まで)。
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