石巻日日新聞

石巻市 指定文化財に奇祭「アンバサン」

伝承の歴史的背景に価値 大根で頬にすす付ける

石巻市 教育・文化 石巻日日新聞 2019年7月8日(月) 21時08分
昨年のアンバサンの様子

 石巻市は、8日までに同市長面地区にある北野神社末社・大杉神社(高橋範英宮司)に伝わる行事「アンバサン」を市指定民俗文化財に指定した。歴史の古い奇祭であり、人々の信仰を受けて地域で伝承され続けてきた歴史的価値を認めた。

 アンバサンは、同神社例祭で400年以上前から続くとされる神事。茨城県から岩手県にかけた沿岸部の漁村地域に散在する大杉神社は「安波山(あんばさん)」とも称され、航海の安全や大漁の神として信仰を集めてきた。

 神事では、浜の人々が曹洞宗龍谷院に集まり百万篇の念仏供養を行い、午後にアンバサンの祭りを実施。独自の習わしとして、参加者が鍋釜から集めたすすである“ヘソビ”を切った大根に付け、境内に集まった人々の顔に塗り合うことで無病息災を祈る。さらに参加者は顔にヘソビを付けたまま、太鼓に合わせて宮司の先導の後に三度唱和し、大漁と五穀豊穣を願う。

 また現在、アンバサンは震災後に非可住地域となった同地区において、元の地域住民をつなぐ役割も果たしている。さらに平成26年からは東北大学が調査を行っており、28年にはアンバサン保存会(阿部邦英会長)が発足するなど、保存・伝承に向けた動きが活発になっている。

 市では長年伝承し続けてきた歴史的背景に価値を認め、文化財として指定することで保護、保存を図る。市指定文化財は59件目となり、民俗文化財は有形と無形を合わせて18件目となった。

最終更新:2019年7月8日(月) 21時08分

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