亥年に猛進 無病息災や豊穣の象徴
奥松島縄文村歴史資料館
石巻市 社会 石巻日日新聞 2019年1月1日(火) 17時11分平成31年(2019年)は亥年。イノシシの肉は万病を予防するとされ、古くから「無病息災」の象徴とされてきた。縄文時代の人々はイノシシを子孫繁栄や豊穣を願う象徴的な動物とし、これを模した多くの土製品を作ったという。東松島市宮戸の奥松島縄文村歴史資料館(菅原弘樹館長)では、かわいらしいイノシシの土鈴を飾っている。鈴は古来より魔除けのお守りとされており、凛とした音が邪を退け、地域の安寧を呼び込む。
イノシシは、シカと並び古くから狩猟対象とされてきた動物。本州の貝塚出土獣骨分析を見る限り、動物質の食糧のうち、哺乳類ではシカとイノシシが主であり、イノシシは縄文時代早期から存在していたようだ。
縄文時代の遺跡から発掘された動物形土製品はイノシシの数が最も多いのに対し、シカは数えるほどしか見つかっていない。これはイノシシがとても丈夫な動物で、さらに多産だったことが理由。先人たちが子孫繁栄や豊穣を願う象徴的な動物にイノシシの土製品を多く作ったという説もうなずける。
一方で、わき目もふらずに突き進む「猪突猛進」といった言葉に表れるように、畏怖の対象として作られたという話もある。いずれにせよ、縄文人はイノシシに対して特別な関心を抱いていたようだ。
県内では仙台市、富谷市の縄文遺跡で出土例はあるが、東松島市宮戸の里浜貝塚ではまだ確認できていない。いつの日か出土することに期待を込め、縄文村歴史資料館では時節のイベントでイノシシを模した動物形土製品のワークショップを開いている。
また館内には職員が手作りした土鈴が飾られ、つぶらな瞳が来館者の心を和ます。大柄な体形から、手のひら大、足の長さが際立つもの、体に縄文模様が施された姿など、どれも表情は豊か。中に土製の玉が入り、揺らせばコロコロと涼やかな音が耳を楽しませる。
解説員の花谷かおりさん(27)は「職員の手作りで一つ一つに違いがある。愛でながら縄文文化に触れてほしい」と話していた。
東日本大震災から間もなく8年。復興完結に向け、今年はイノシシのように無病息災で前に進む年であってほしい。そう土鈴に願いを込めた。
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