石巻日日新聞

パートナー求めるシニア 価値観共有で新たな人生 東松島の有志初企画

ズーム&ワイド

東松島市 社会 山口 紘史 2019年12月9日(月) 8時59分

 結婚相手を探す「婚活」が市民権を得てから久しく、今や官民主催の婚活イベントが各地で催されている。しかし、シニア層(55歳以上)の出会い作りにはまだ十分に社会の目が向けられていないのが現状だ。さらに東日本大震災後は配偶者との死別や離婚などで高齢者の独居世帯が増加。老後の独り暮らしの生活に不安を抱き、新しいパートナーとの出会いを求める人も多くなってきた。こうした声に応えるため、東松島市の地域有志で構成する東松島シニア婚活実行委員会は、50―60歳代限定の「出会いパーティー」を初開催した。

 日本人の平均寿命は80歳以上で、仕事などに一段落がついた人のセカンドステージは20年以上。長いシニアライフを一人で過ごすのは時に孤独感も生む。少子化対策で各自治体は婚活企画を盛んに催すが、多くは20―40代の若年層向け。「50代以上は参加不可」など年齢制限も多い。東松島市も例外ではなく、同実行委はシニアの声に応える形で、50―60歳代限定で出会いの場を設けた。

 実行委は大橋博之市議会議長を軸に小野幸男、齋藤徹両市議、やもと整骨院、東松島みらいとし機構、東松島あんてなショップまちんどなど地域有志ボランティアで構成。シニア層は若年層と違い、必ずしも婚姻を望む人が多いわけではないことから、パーティーはあくまで男女の「出会える場」とし、連絡先を交換するまでにとどめ、その後の交際は参加者同士に任せた。

 パーティーは11月29日に矢本駅前のまちんどであり、9人(男性4人、女性5人)が参加。大曲地区に住む無職の女性(52)は市報を見て申し込んだ。20代で結婚後、夫の女遊びに愛想を尽かして震災後に離婚。公私ともに出会いの場はなく、今は母親と障害のある兄と一緒に暮らしている。

 始めはパーティーへの参加をためらったというが、老後の不安は拭い切れず、他の参加者が同世代ということも背中を押した。「20年以上の結婚生活を経験したので、容姿や性格以上に価値観の合う人が理想。真面目に働き、酒癖が悪くなくギャンブルをしない人がいれば」と話した。

 同じく市報で開催を知った鳴瀬地区の自営業の男性(67)は未婚。過去には石巻市、東松島市が主催する婚活事業のほか、民間のイベントにも参加した。「年齢制限の厳しさ、入会手数料やマッチング料で数十万円と詐欺まがいの業者もあった。諦めかけていたが、やはり老後の不安があって応募した。離婚経験者でも子持ちでも構わない。爽やかで、人間として自立した人と出会いたい」と語った。

 自己紹介で幕を開けたパーティーでは、参加者は緊張した面持ちだったが、趣味や動物、デートスポットなどの話題に花を咲かせるうちに、徐々に和やかな雰囲気となった。グループトークの後、個別トークを楽しみ、価値観や人生、生活状況などを確かめた。

 大橋議長は「結婚を目標とせずとも、人生を共に歩める友人的なパートナーが見つかれば、それだけで人生は楽しい。心の健康は体の健康に直結するので、福祉課題の解決にもつながる。互いに共通の時間を過ごす中で恋愛に発展してくれればそれも良し。要望があれば年1、2回は企画したい」と話した。

 後日、実行委に聞いたところ、1組が交際に発展したという。

◇   ◇

 人生経験の豊かなシニア世代ゆえ、一筋縄ではいかないさまざまな事情が付きまとう。それでも「人生はいつまでも青春」であり、価値観を共有できるパートナーとの出会いは、その人の人生をさらに輝かせる。高齢社会の現代、誰にとっても住みよいまちづくりを目指すのであれば、シニア世代のセカンドステージにも目を向けることが必要だ。

最終更新:2019年12月9日(月) 9時00分

新着記事