石巻・水野水産 「伝承牡丹焼鯖ちくわ」全国10選
金華さばの中骨活用 産学開発で価値向上へ
石巻市 政治・経済 阿部 達人 2019年11月15日(金) 8時44分東日本大震災後に水産加工業が縮小傾向にある中、水野水産(水野睦子社長)=石巻市魚町=の取り組みが注目を集めている。産学連携商品の「伝承牡丹焼鯖(さば)ちくわ」が農林水産省主催の表彰行事で全国1491点の応募品から10選入りした。他社との共同開発も積極的に展開しており、外部連携で独自の商品価値向上に努める。水野武仁専務取締役は「産業復興の一事例になれば」と望んでいた。
同社は石巻発祥とされる、焦げ目が特徴のぼたん焼きちくわを手掛ける。平成29年からはこうした練り物文化の特産品化を図る石巻フードツーリズム研究会「石巻おでんプロジェクト(PJ)」に参画している。
同研究会は産学、異業種連携の観光推進団体。水野水産もPJの中でぼたん焼きちくわの価値を見直すとともに、共同開発を進めた。その一つが「伝承牡丹焼鯖ちくわ」。昔ながらの味を再現しつつ、水産加工業者の商品製造過程で生じる金華さば中骨のレトルト加工品を新たに取り入れた。
中骨レトルトは宮城学院女子大教授でPJに携わる石原慎士さんが石巻専修大の勤務時代、ゼミ生らと完成させたもの。PJには現在も石専大生の石川律さん、佐藤佑哉さん、羽生真里さん、阿部凜華さんが携わる。
焼鯖ちくわは全国の優れた産品を表彰する農水省の「フード・アクション・ニッポンアワード」に宮城学院女子大名義で出され、10選入り。味はもとより産学連携体制で、未利用資源の中骨と地域の食文化を生かした点などが評価された。
アワードの最終審査は先月17日に都内で実施した。流通、小売りなど大手10企業が一次書類審査を通った100点から「受賞」を選出。焼鯖ちくわはイオンリテール(株)が採用しており、今後、全国のイオン運営店舗に取り扱いは広がる。
震災後、水産加工業を取り巻く状況は厳しく変化。販路を確保しても、小売り業者は震災を踏まえたリスク回避で仕入先を分散させており、取引当たりの販売量は軒並み減少しているという。
連携は利益率の向上策であり、「1社だけでは難しく、事業者や地域、県民一丸で進めるのが重要」と水野専務。焼鯖ちくわも自社商品以上に、他社と共に石巻の名物化に向けたいという。
PJを土台にしたつながりは地域外にも及び、お茶の井ヶ田グループ企業と「仙台・秋保発」、加美町振興公社とは「宮城・加美町発」と銘打った商品を開発。各地の特産品を使用した練り物の製造で可能性を広げている。
水野専務は「中小企業だからこそ大手にできない商品を作り、消費者に『選んで』買ってもらうことが大切」と話していた。
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