旧門脇小 時が止まった教室 一部解体で最後の公開
津波、火災の痕跡 今も
石巻市 社会 熊谷 利勝 2019年10月11日(金) 9時23分石巻市は9日、東日本大震災の遺構として保存する旧門脇小学校の整備工事が始まるのを前に、被災した本校舎内部を報道公開した。令和3年前半を見込む供用開始後は新設する観察棟から内部を見学することになり、関係者以外の立ち入りは今回が最後の機会。劣化が著しいため、移動できる範囲は限られたが、丸焼けの3階など8年7カ月前から時間が止まったままの教室があった。
公開は1社当たり30分。事故があっても市は何ら補償しないことを条件に立ち入りができた。3階建ての校舎は左右対称のつくりで、移動は中央部3階までの階段周辺のみに限定された。
中央昇降口の裏側に当たる1階の北側から入る。市はありのままを保存することにしており、「散らばったガラス片を踏んだり、落ちているものを動かしたりしないよう足元に注意を」と念を押された。
旧門脇小は震災の被災地で唯一、津波による火災の痕跡を残す遺構という。当時、校内にいた児童は津波が襲来する前に避難し、逃げ込んだ住民も教員と協力し、火災が迫る中で2階から裏山に避難している。
保健室や職員室などがある1階は主に津波の被害で、校長室があった東側に火災の跡がある。床は砂にまみれ、廊下にランドセルや備品が散乱。1.8メートルの高さまで浸水したというが、下駄箱に何足かの靴があり、卒業制作や額縁の賞状が壁に残っていた。ほこり臭さと装着したマスクの繊維臭さが震災当時を思い出させる。
2、3階は教室。2階は東側が丸焼けで、天井板がなく構造材がむき出し。半面、中央から西側は火の手が及んでおらず、特別支援教室は地震直後のように机があちこちを向き、棚から物が落ちていた。
3階は全焼し、マスクをしていても焦げた臭いがした。焼け方は激しく、金属の構造材もゆがんでいる。2階のすすけた色に対して、3階はさびた茶色の風景。階段の目の前は備蓄倉庫で、使うことのなかった缶詰が転がっている。隣の教室では、骨組みだけの机が整然と並んでいた。
市は費用の問題などから校舎両端の2教室分を解体する。工事は11月上旬以降を予定し、15日から覆いを外すなどの準備作業を始める。震災伝承室の渋谷幸伸室長は「3・11の出来事を後世に伝え、命が守られるようにしたい」と話していた。
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