野生の“熊”はいるのか 相次ぐ目撃も証拠なし 後ろ姿はカモシカ似?
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広域 社会 熊谷 利勝 2019年9月16日(月) 8時49分石巻地方でツキノワグマらしき熊の目撃情報が相次いでいる。紙面に記事が掲載されるようになったのは平成26年ごろからだが、写真や映像が公開されたことはなく、多くの人は「本当にいるの?」といったところだろう。実際にニホンカモシカと見間違えた可能性が高い目撃情報がある。もともと県内は奥羽山脈中心に生息しており、住民の安全を守る行政とすれば、万が一を考えて石巻地方にはいないと言い切れないのが実情だ。
石巻市に住む男性(75)は新聞配達で稲井中学校近くをバイクで移動中、あぜ道を移動する熊らしき動物を見た。初めは子牛かと思ったが、そうではないと気付き、警察に情報提供した。この男性はこれ以前にも、そこから少し離れた新栄を移動中、空き地にいた動物と目が合ったことがある。「熊だと思って、声を上げた。一瞬の出来事で、再びその方向に目をやったら、いなくなっていた」という。紙上に熊の目撃情報が掲載される前のことで、「言っても誰も信じないだろうと思い、通報しなかった」そうだ。
紙面で最初に熊の目撃騒動が掲載されたのは、全国で出没が盛んに報道されていた平成26年5月。翌月には女川原子力発電所のカメラに映り込んだ。この画像は公開されておらず、驚きとともに疑心暗鬼が広がった。
県のまとめによると、石巻地方の行政、警察機関に寄せられた目撃情報は、26と27年度がともに9件、28年度は12件、29年度が21件と増加。昨年度は16件、本年度は4月から今月8日まで14件。市町別では石巻市が毎年度、東松島市は28年度から頻繁に目撃されるようになった。反対に女川町は28年度以降、目撃情報が途絶えた。
車の運転中に道路を横切った熊の目撃が多く、足跡のみの通報もある。親子の目撃例もあり、これが事実ならば石巻地方で繁殖している可能性が高くなる。
石巻市は昨年12月以降、住宅地の鹿妻地区で目撃が相次いだことから、周辺にカメラを設置。ところが映っていたのはカモシカだったという。近年はカモシカを平地でよく見かけるようになった。このカモシカ、雪の少ない地域は黒っぽい毛色をしており、後ろから見ると熊と見分けがつかないのだとか。担当課は「熊がいる証拠はないが、可能性はゼロでない。目撃情報が間違いとはいえない」とし、ホームページなどで周知に努めている。
現状では熊による被害はない。被害がなければ、もしくは被害を及ぼす可能性があるとき以外は保護法上、捕獲などができない。県と2市1町など関係機関は先月、緊急時の対応を確認している。
県は目撃情報があった場所を地図上に表記し、ホームページで公開。目撃情報のマークは県全体をほぼ埋め尽くし、空欄が目立つのは石巻地方だけ。目撃情報は隣の市や町にも広がり、分布を見る限り石巻地方まで来ないと考える方が、虫がよすぎると思えてくる。東松島市の鳴瀬地区は「いる可能性が高い」(県東部地方振興事務所林業振興部)という。
入山する場合は、鈴などで音を出して人がいることを熊に知らせ、出くわさないのがまずもっての対策。山林に入ることも多い石巻市水沼の男性(69)は、「フンや足跡は田畑を荒らすニホンジカと異なる。直接見たことはないが、熊はいると思う」と警戒する。
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