石巻日日新聞

石巻川開き祭り 「一皇子神社みこし」を担ぐ 気温、心意気もアツく

ズーム&ワイド

石巻市 教育・文化 熊谷 利勝 2019年8月10日(土) 20時56分
威勢のよい掛け声とともに進む一皇子みこし

 石巻市の中心市街地が一年で最も盛り上がる「石巻川開き祭り」(同祭実行委員会主催)。今年の第96回も7月31日、8月1日に行われ、2日間で19万4千人(主催者発表)が来場した。旧北上川での花火大会に孫兵衛船競漕、目抜き通りのパレード、綱引き競技、そしてみこし。見て楽しい祭りは、参加する側であればまた印象は違ったものになるだろう。ちょっとしたツテで、“いづおんつぁん”の名で親しまれる一皇子神社=石巻市湊字大門崎山=のみこしに私も飛び入り参加してみた。 

 31日午前11時45分、石巻小学校近くの中央一大通りに法被を着た人たちが集まっている。出発の前の安全祈願であり、男だけなく、女性の姿もある。私も調達した法被姿で出発の時刻を待った。

 集まった人は約100人。見れば法被は1種類ではない。地元有志の一皇会(阿部文雄会長)が中心だが、半数は東京からの応援。相互に交流しているのだという。

 午後0時30分、威勢の良い手拍子でいよいよ出発。1トンほどの重さのみこしを50人ぐらいで担ぐ。中央一大通から北のアイトピア通りを抜け、西進して七十七銀行近くの立町大通りまで約1キロの行程。子どもみこしを除けば約40年の人生で初の参加である。

 みこしの左側が地元、右側は応援の担ぎ手。地域の違いから、「おりゃ」「せいや」とさまざまな掛け声が入り交じる。私はまず後方に加わり様子を見る。担ぎ方は見よう見まね。身長165センチの私は回りと背が合わず、なかなか棒が肩にとどかない。慣れた人は、足の運びも軽やかにリズムを刻んでいる。

 担ぎ手を交替しながら、アイトピア通りへ。担ぐ楽しさを満喫するかのように、みこしは進みそうで進まず、休憩に入りそうで入らない。徐々に前の方に移動して担ぐと、みこしの重さを肩に感じる。担ぎ棒がやけに熱い。前日に梅雨明けした石巻市は、正午過ぎにこの日最高の34度を観測(泉町の観測地点)した。

 何度かの休憩を挟んで立町へ。疲労感と暑さで、休むたびに冷たいお茶やスポーツドリンクを一気に飲み干した。この暑さのせいだろうか、沿道の見物客は例年よりも少ない気がした。

 開始から終点まで約1時間半。手拍子で締めくくる。すでに次のアクアカーニバルが始まっており、疲れを引きずったまま急ぎ着替えて取材に向かった。

◇  ◇  ◇

 「みんな声が出ていて良かった」と満足そうに話すのは、一皇会副会長の一人である阿部一弘副会長(53)。会は会長をはじめ、松浦秀樹副会長、留畑豪紀最高顧問ら地元一皇子講の若手が東日本大震災で傷んだ神社の修復しようと立ち上がったのが始まりだ。震災後の川開きへの参加は平成29年から。被災で地域の人口が減る中、阿部会長(52)は「湊地区はまだまだ元気だというのをアピールしたかった。みこし以上に心を一つにするものはない」と振り返る。

 神社の春の祭典で巡行されてきた神事のみこしは、担ぎ手が白装束に白いマスクで口を覆う独特のいでたち。掛け声を発しない点でも、川開きで行うのとは異なる。一皇会の担ぎ方は、交流のある東京の江戸みこしの影響を受けており、正解がないのだという。見よう見まねでよかった。

 川開きでよく誤解されるのは、湊出身でないと担げないということ。阿部会長は「毎年、東京から応援で担いでもらっている。誰でも受け入れますよ」という。

 みこしに限らず、もっと市民参加ができる行事があれば、川開きはもっと盛り上がるのでないかと思う。気温が暑く、担ぎ手の心意気も熱かった一皇子みこし。赤くなった肩が、風呂でひりひりした。(熊谷利勝)

最終更新:2019年8月10日(土) 20時59分

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