復興公営住宅の空室 ⑤ 共助視点での利活用を
次代への軌跡
石巻市 次代への軌跡 熊谷 利勝 2019年7月20日(土) 15時12分東日本大震災の被災地で最大の4456戸の復興(災害)公営住宅を供給した石巻市。入居希望者の意向変化などで全戸が埋まることはなく、多数の空き室が生じている。人口減少が進めば、さらに無人の住戸は増えてくる。多数の管理戸数を抱える中、空き室を住宅として貸し出していくのは限界があり、柔軟な利活用を求めたい。
定住対策で重視されるのが仕事と住まい。「移住者に復興公営住宅の空き室を提供してはどうか」との提案は、市議会などでたびたび耳にする。
高齢者の多い団地に若い世代が入居し、なおかつ団地会の役員などを担ってもらえれば、自治活動で何かしらの効果があるかもしれない。一般募集を開始した現在、低額所得者向けという市営住宅の入居要件が合えば、移住者の受け入れはできる。ただ、仕事を辞めて引っ越してきた当初は低い家賃でも、働いて収入超過となれば割増賃料がかかる。
そこで注目されるのが、みなし特定公共賃貸住宅への転換。市営住宅の入居要件を拡大し、中堅所得世帯まで広げた公的な賃貸住宅になる。民間賃貸物件の不足に対応した制度で、石巻市でも旧町で実績がある。半島沿岸部で活用を検討する余地があるが、市街地は震災後の一時期を除いて民間物件が不足しているとはいえない。
そもそもこの企画で復興公営の空きを取り上げたのは、市民に住宅としての活用を望まない声があったためだ。「復興住宅を民間市場に回されたら、とんでもないことになる」との指摘だ。この市民は「復興以外に使わせない。余ったら壊す」とまで言う。民間賃貸業を圧迫する懸念があるからこそ、市は空き室の取り扱いに慎重だ。
将来を見据え、公営住宅の目的外での検討が必要と考える。公営住宅法では、社会福祉法人などが公営住宅をグループホームやケアホームとして使用することが認められている。全国には高齢者の生活支援や子育て支援といったコミュニティービジネスなどの拠点として、空き室をNPOや市民団体に提供している自治体もある。
コミュニティーの希薄化や孤立が指摘される復興公営住宅。空き室は「共助」や「協働」の視点で利活用を考えることが重要と思われるが、読者はいかがか。
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