石巻日日新聞

コメの未来 ④ 展望 品種改良で付加価値

次代への軌跡

石巻市 次代への軌跡 渡邊 裕紀 2019年5月10日(金) 20時21分
新米試食会で味の違いや品質を確かめた

 稲は時代とともに品種改良が進み、病気に強く、収量も増加。戦後に宮城県内で開発された「ササシグレ」の作付面積は、昭和32年に東北地方で第1位となり、石巻地方でも栽培された。しかし、同39年のいもち病大発生を期に後継の「ササニシキ」に転換された。

 ササニシキは新潟県などで栽培されるコシヒカリとともに「東西の両横綱」と呼ばれる人気品種となり、60年の作付面積はコシヒカリに次ぐ全国2位。ただ、ササニシキにも弱点があり、冷害耐性が低い。平成5年に天候不順で壊滅的な生育不良となり、いわゆる「平成の米騒動」が起きたことで、より耐冷性のある新品種「ひとめぼれ」に時代は変わっていく。

 石巻地方は現在、ひとめぼれとササニシキが主力だ。ひとめぼれの方が作付面積は大きいが、ササニシキは近年になって作付面積が増大傾向にある。コシヒカリを代表する粘りのあるモチモチした食感が主流のコメ市場で、あっさりとした食味が特徴のササニシキが再評価されていることが要因だ。特にすし店に好まれており、酢飯にすると他の品種より主張が少なく、ネタとの相性も抜群という。

 県では、ひとめぼれを上回る食味を持つ「東北210号」が開発され、28年に奨励品種として採用。30年には「だて正夢」と命名し、県内での本格栽培がスタートした。高価格帯のブランド米として差別化され、特定要件を満たす団体や生産者が栽培を許される登録制。品質基準を満たさなければ「だて正夢」を名乗ることはできない。作付面積は石巻地方でも拡大し、最終的に県内で6千ヘクタール、3万トンの収量を目指す。

 県内では主力品種「ひとめぼれ」の栽培が約25年間続き、だて正夢を除いて、今のところ新品種の声は聞こえてこないが、もしあるとすれば「ひとめぼれの優れた食味を継承しつつ、収量が増える品種になるだろう」と市内のコメ農家は予測する。

 国内のコメ消費が減少する中、少しでも特長のある品種でブランド化し、抜きん出ようとする〝コメの戦国時代〟は当分続きそうだ。

(渡邊裕紀)

タグ:コメの未来
最終更新:2019年5月10日(金) 20時21分

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