石巻日日新聞

卒業式での服装優劣解消へ 東松島市 保護者アンケート実施

小学生のはかま姿疑問視 渥美市長 制服導入検討

東松島市 政治・経済 石巻日日新聞 2018年12月12日(水) 14時19分

 東松島市内の小学校卒業式で、はかまや着物姿で出席する女子児童が増え、年々華々しさを増していることに対し、渥美巖市長は11日の市議会定例会一般質問の答弁で「親の経済負担も心配だが、それ以上に家庭の経済的事情ではかまを着られない少数の児童の心情が気がかり」と経済格差の心情を考慮。一部小学校では約9割がはかまや着物だったという事例もあり、質問した手代木せつ子議員は、服装で優劣がないように高学年への制服導入を提言。市教委は年度内に保護者アンケートを行う考えを示した。

 東日本大震災で甚大な被害を受けた東松島市。市教委によると11月末現在、家庭の経済的理由や生活困窮、震災の影響などで小学生の約4割が給食費や学用品費など就学援助を受けている。

 一方、卒業式における服装の華美は年々加熱。一部の学校では約9割の着用事例があるという。県内では、はかまや着物のレンタル料は3―4万円。着付けや髪のセットなどは約1万円。レンタル予約は1年前から行う家庭が多いという。

 一般質問で手代木議員は「はかまは和のりりしさで『着たい』『着させたい』と人気はあるが、金銭的負担は相当なもの。高学年に制服を導入するなど普段から同じ格好をすれば家庭の格差も生じない」と提案した。

 渥美市長もこれに賛同。「家庭の経済状況ではかまや着物を着たくても着られなかった12歳の女児の心情はどうなのか。常に子どもたちに接している教諭の考えも市教委を通じて聞きたい」と語った。

 制服導入の案に対しては「卒業式や修学旅行などの節目で悩むことなく参加できる。アンケートで保護者の意向を問いたい」と答弁した。ただし制服費用の市の助成では「中学校の制服購入でも助成支援を行っていないので難しい」とした。

 工藤昌明教育長は金銭的負担を理解し、華美になりすぎないよう学校を通じて保護者に配慮を求めていることを強調。「私立や東京以西の公立小で制服を導入しているところもあるが、県内の公立小はない。問題提起を含めて保護者にアンケート調査を実施する」と述べ、年度内に調査する方針を示した。

 市内に8つの小学校があるが、市教委によると、はかまや着物の着用率は学校によって大きく異なり、9割の着用もあれば、洋装を促した学校についてごく少数にとどまったという話もある。

取材余話 (山口紘史)

児童の本音は

 小学校の卒業式は毎年取材するが、東松島市では、はかま姿の女児の多さが目立つ。髪も整え、様相は「成人式」そのもの。緊張もあるが、女児の顔色はどうも優れない。着慣れなさが〝いずい〟を引き起こしているのだろうか。

 質問した手代木せつ子議員は、約10年前に娘の小学校の卒業式ではかまを着せた経験談に触れた。「早朝から美容院で着付けし、朝食もままならず登校。慣れない姿から階段で転びそうになるなど酷な思いをさせた」と後悔を口にした。

 市教委の話では、独自に卒業式の服装に対する保護者アンケートを行った小学校もあるという。「着用させてもいい」が20.4%に対して「着用させない方がいい」「学校に委ねる」がともに39.8%だった。

 「娘の晴れ舞台」と考えるのは当然の親心だが、経済的負担は大きい。中には無理をしてレンタルする家庭もあるはず。アンケートの数字からは、そんな構図も浮かぶ。「周りが着るのなら娘にも着せてあげなければ」と結局は親心なのだ。

 一般質問の答弁で渥美市長は「12歳の女児の心情はどうなのか」と心を寄せるが、当事者への聞き取りをしていない以上、推測の域は出ない。市教委は保護者に対してアンケートを実施する考えだが、卒業式の主役はあくまで児童。

 最終的な判断は保護者と学校が話し合って決めることになるだろうが、このままでは当の児童が置き去り。心情をくむには児童へのアンケートなど直接声を聞いてみては。主役の本音は果たしてどうなのだろうか。

最終更新:2018年12月13日(木) 21時22分

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