大川小遺族に市長謝罪 児童74人犠牲の責任認める
出席者から教訓生かす声
石巻市 社会 阿部 達人 2019年12月3日(火) 8時42分東日本大震災の津波で児童74人が犠牲になった石巻市立大川小学校を巡る訴訟で市と県の敗訴が確定したことを受け、市は1日、ビッグバンで遺族説明会を開いた。亀山紘市長は「学校管理下で児童の命を救えず、遺族にも十分な配慮ができなかった」などと市の責任を認め、謝罪した。遺族は戻らぬわが子への悲しみと事故から8年以上を経ての謝罪に複雑な心情をのぞかせながらも、市が共に事故と向き合い、教訓が防災体制の強化につながることを望んだ。
説明会には市が案内状を送付した56遺族のうち17遺族27人が出席。市側は亀山市長や境直彦教育長らが出席し、県の伊東昭代教育長も同席した。亀山市長は震災後の行方不明者の捜索や遺族説明会での対応が不十分であったとして、「遺族に多くの疑念を抱かせ、さらなる悲しみを与えてしまった。何の慰めにもならないことは承知しているが、子どもたちの冥福をお祈り申し上げる」と頭を下げた。
境教育長は「教育委員会としてなすべきことをしていなかったために、重大な事故を引き起こしてしまった。安全安心な教育環境を築いていくことを誓う」と責任を述べた。
質疑は約2時間に及んだ。遺族からは「今でも時間が止まったまま」「この謝罪は受け入れられない」と悲痛な思いが語られ、これまでの市の対応の不誠実さを糾弾。それでも事故を教訓とした今後の取り組みが意見交換の中心となり、遺族は「防災マニュアルを運営する人への投資を」「児童の顔が見える防災教育を」などと求めた。
事故の詳細調査について市側は「話し合いの場は必要であり、進め方など皆さんの意見を聞きながら対応したい」と返答。校舎の遺構化でソフト面について「内容を遺族と共に作り上げたい。判決を踏まえて責任の所在を組み込むことも必要になる」と答えた。
説明会後、亀山市長らは遺族の要望を受け予定になかった大川小訪問を行い、慰霊碑に手を合わせた。震災後、初めて遺族の説明を受けながら校舎内を回った亀山市長は報道陣の取材に対し、「遺族と思いを一緒にして進む上で大きな一歩」と話した。
説明に当たった鈴木典行さん(54)は「裁判の結果を受けての謝罪であり、求めていた形ではないが、言葉で説明する機会を得られた意義は大きい」、佐藤敏郎さん(56)は「同じ方向を向き合うきっかけになった。早い時期から歩み寄れたはずだが、それができなかったことも教訓として発信すべき」と語った。
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