「震災遺構」⑤ 理念共有 伝承の主役は市民
次代への軌跡
石巻市 次代への軌跡 熊谷 利勝 2019年12月2日(月) 8時59分東日本大震災の最大の被災地である石巻市は、かけがえのない大切な命を守るため、震災の事実と教訓、復旧・復興への思いを、世代を超えて、地域を越えて、すべての人々へ伝え続けます―。
これは市の震災伝承の基本理念である。旧門脇小学校と旧大川小学校の震災遺構整備は、その実現に向けた取り組みの一つ。市には遺構がなぜ必要なのかを含めた全市民への理念の共有を求め、市民にはそれぞれが伝承の主役となるよう提言したい。
連載では門脇小を中心に、市が部分保存を決めた経緯を振り返り、全体保存を望む住民との溝を指摘。活用には他施設との連携が必要なことも示した。
災害危険区域となった大川小周辺と異なり、門脇小周辺は再生された市街地。津波火災の痕跡を残す校舎に対して、「多くに見てほしい」「もう見たくない」と相反する住民感情がある。お金をかけて残すかどうかの賛否両論もあり、おのおのの事情で引っ張り合った結果の部分保存である。
地元の元消防団の濱谷勝美さん(77)は当時、同小体育館で難を逃れた。頼まれれば体験を語る濱谷さんは「できれば全部を残してほしかった。整備するからには日本だけでなく、全世界に伝わるように」と願った。同じく全体保存を訴えるかどのわき町内会長の本間英一さん(70)は「地震、津波、火災に加えて部分解体という人災で四重の被災を受けることになる」と言い、“人災遺構”と皮肉った。
生活が落ち着き、解体を望んでいた住民も考えを変えている。逆を言えば、この先も気が変わることがあるということだ。亀山紘市長は「ある時点で判断しないと永久に決められない」と言う。保存を巡る難しさも、教訓として伝承すべきだ。
千年に一度という震災に対し、整備後の校舎の耐用年数は30年ほど。やはり伝承の主役は人だと考える。それには世代交代しても伝承していける仕組みが必要。市は個人、団体などが行う伝承活動を支える中間支援組織の設立を検討するが、まだ具体の動きは見えない。
震災伝承の議論はこれまで遺構が中心で、主に市と住民または遺族の間でのやり取り。その他の市民にも、それぞれに教訓や伝えたい思いがあるだろう。より多くの関わりがあれば、遺構や伝承活動を通じた地域の活性化も見えてくる。
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