石巻日日新聞

亀山市長も脱マイカー 広がる免許証自主返納の輪

11日から春の交通安全運動 課題は「生活の足」支援

石巻市 社会 横井 康彦 2019年5月9日(木) 18時08分

 高齢ドライバーによる交通事故が社会問題となっている昨今、悲惨な事故の加害者となる前に、車との生活から卒業しようと運転免許証を自主返納する人が増えている。「春の交通安全県民総ぐるみ運動」(11―20日)を主催する石巻市交通安全都市推進協議会会長の亀山紘市長(76)もその一人。免許返納は高齢者事故の未然防止の一手。亀山市長に免許返納後の生活や石巻市の返納後のサポートなどについて聞いた。 (横井康彦)

 ―免許返納の時期ときっかけは。

 市長 平成29年10月に75歳を迎えて後期高齢者となった。その時が免許更新のタイミング。体力や運転に自信はあったが、加齢で集中力や反応など身体の機能は間違いなく低下しているという自覚もあった。高齢者事故が多発しており、「私が事故を起こす可能性もゼロではない」と考えて妻に相談した。生活の足の車がなくなることに不安もあったが、事故を起こすリスクを考えて29年11月19日に返納手続きをした。

 ―返納後の生活は。

 市長 昭和39年に運転免許を取得し、運転することが好きだったので、返納直後は不便さも感じた。それだけ車に依存した生活をしてきた。

 日常の買い物は公共交通機関や徒歩が中心となり、生活様式も変わったが、良い面が多い。仙台に住む子どものところに行く際、これまで車移動だったものが、仙石東北ラインを使うことになり、危険もなく落ち着いて移動できている。車のない生活に順応するとゆっくりとした生活ができると感じている。

 ―石巻市で免許返納を進める際、地理的諸課題が多い。

 市長 地域によっては車のない生活が厳しい所もある。東日本大震災に伴う防災集団移転事業で高台移転した地域では、職と住まいが分離されたところもある。移動手段に車が不可欠な人も少なくなく、石巻市での免許返納の難しさはそこだと考える。

 ―半島や中心部から離れた地域の現状も踏まえ、今後の対応や返納サポートは。

 市長 半島沿岸部など免許返納後の生活の足の確保は大きなテーマ。注目するのはカーシェアリングを活用した「コミュニティーカーシェアリング」。実現に向け調整を進めており、他にも連携できるところもあるかもしれないので、しっかりと考えたい。

 全国各地域でさまざまな返納後の取り組みをしており、自主返納しても不便を感じない特典を考えることは必要。特に移動手段の補助であり、買い物の後に荷物を宅配した際の補助事業を行っている自治体もある。動向や取り組みを調査し、石巻市としても方策を打ち出していきたい。

 住民バスの確保も必要と考えるが、運行するにも予算がかかる。他の移動手段と同様に協調させていくかが課題だ。

 ―同世代のドライバーには。

 市長 免許返納は住んでいる場所で難しい場合もある。普段の運転で細心の注意を払うことはもちろん、体力や運動機能の限界を感じた場合は、返納を考えていただければ。

◇   ◇

 県内の免許保有者数は154万人で、このうち石巻免許センター管内(2市1町)は12万8191人。65歳以上の高齢ドライバーの免許保有率は約22%となっている。昨年内の免許返納者は石巻免許センター受付分448人、石巻署分93人、河北署分26人だった。

 従来の運転免許返納は事故を起こした後に家族に説得されたなどの理由が多かった。近年は「地域の交通安全のために」と、地域貢献として晴れ晴れとした気持ちで車を卒業する人も多い。

 車は便利な乗り物だが、運転には瞬時の判断力と運動能力が必須。11日から春の交通安全運動も始まる。地域の交通情勢も踏まえて自身と車、そして地域の安全を考える機会としてほしい。加齢に伴う衰えを感じた際は家族と相談し、事故防止の観点から返納が望ましい。家族と地域、そして何よりも自身のために。

最終更新:2019年5月9日(木) 18時31分

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