石巻日日新聞

石巻市・災害援護資金 納期到来の返済額4割

回収不安が現実味

石巻市 政治・経済 石巻日日新聞 2019年10月4日(金) 8時54分

 石巻市が東日本大震災の被災者に貸し付けている災害援護資金は、返済されるべき金額(7月末現在)の約4割に当たる3億円余りが未納になっている。滞る理由は主に「生活費以外の余裕がない」「税や住宅ローンなど他に優先すべき債務がある」など。もともと一定の所得以下の人を対象にしており、回収への不安が現実になってきた。無理に返済を求めれば“援護”にならないため、市は借受人の生活実態に即した対応に努める。

 同資金は世帯主の負傷や住宅、家財に損害を受けた世帯に対して、最大350万円を貸し付ける制度。各市町が国、県から借り入れして実施しており、石巻市は7月末現在で延べ3057件約64億1502万円を貸し付けている。石巻市は本年度末まで受け付け、県内では仙台市に次ぎ2番目に多い貸付金額となっている。

 所得の低い人の生活の早期立て直しを目的にしており、連帯保証人がいれば無利子。いなくても有利子で借りられるのが特徴で、3057件のうち71.2%の2177件が該当する。

 返済は6年か8年据え置くことができるが、ともに貸付開始から13年で返さなければならない。石巻市では早い人で平成29年6月に猶予期間後の償還が始まった。今年7月末までに納期が到来した8億797万円のうち、返済済みは約58%の4億6845万円。残り約42%の3億3952万円が未納の状況だ。返済済みの総額は、期日前の繰上げ償還分約12億2172万円を合わせて16億9017万円となっている。

 納期到来分の未納額は東松島市が7%、女川町が14.6%。石巻市が際立つが、多額の未回収が生じた平成7年にあった阪神・淡路大震災の被災地と同様、借受人の高齢化や失職などで他市町も未納が増える懸念がある。

 石巻市は個別相談を実施し、世帯の収入状況に応じた分割償還や少額償還、または支払い猶予などの対応を通じ債権回収に努める考え。ただ、回収経費は原則的な償還期限の令和13年までの想定で、人件費を除き約3億8千万円。利子を充てることになるが、見込まれる収入は約2億円と赤字になる。

 この問題は、先日の市議会定例会一般質問で取り上げられ、市当局は「財政支援について機会をとらえて国に要望を行っている状況だ」と説明した。

最終更新:2019年10月4日(金) 8時54分

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