石巻に残る小室達の作品 赤十字病院に皇后施薬之像
政宗騎馬像の彫刻家
石巻市 教育・文化 石巻日日新聞 2019年8月8日(木) 20時40分宮城のシンボルで仙台城址の「伊達政宗騎馬像」を手掛けた彫刻家小室達=柴田町出身=は、今年で生誕120周年を迎えた。制作したブロンズ像の多くは、第二次世界大戦の金属回収で失われるも一部は供出を免れており、石巻赤十字病院敷地内の「光明皇后施薬之像」もその一つ。郷土史研究に励む佐々木慶一郎さん(72)=石巻市北村=は「小室は石巻とも関わりが深く、地域に関心を寄せてほしい」と話した。
小室は明治32年に生まれ、東京美術学校(東京芸術大学)彫刻科で学んだ。大正11年、25歳のときに文部省主催の第4回帝展で初入選し、第6回で特選、第7回では無鑑査となるなど若くして才能を発揮。代表作の政宗騎馬像は昭和10年の政宗生誕100周年祭に合わせ、県青年団の依頼を受けて作成した。
石巻におじがいた縁で何度も足を運んでいたほか、石巻出身の彫刻家、高橋英吉(1911―1942)は小室より1回り年下だが東京美術学校の同窓。小室の日記には英吉がアトリエを訪ねてきたことも記されている。初代石巻市長の石母田正輔の銅像など石巻ゆかりの作品も作った。
しかし、小室の多くのブロンズ彫刻は大戦中に国の金属回収令で溶かされ、軍事に回された。政宗騎馬像すら供出を免れず、現在仙台城址にあるのは後に鋳型を使って復元された2代目だ。
石巻赤十字病院敷地内に建立されている昭和7年制作の光明皇后施薬像は、こうした時代の流れにも失われなかった作品。柴田町出身で、小室が創設した南郷高校の同窓会長である佐々木さんは「モデルとなった皇后さま、戦地に赴いた赤十字の看護師への敬意から供出を免れたのでは」と推測する。
柴田町での小室の知名度は高く、6月にはしばたの郷土館で誕生120年展が開催された。佐々木さんは「石巻と小室のつながりはもとより、政宗騎馬像の作者が小室と知る人も少ない。生誕記念で関心が高まれば、石巻で新たに小室作品が見つかるかもしれない」と望んでいた。
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