故 高倉健さん主演「鯨と斗う男」 寄付で上映会実現
銀幕によみがえる60年前の鮎川
石巻市 教育・文化 石巻日日新聞 2019年8月7日(水) 21時38分石巻市鮎川浜をロケ地として昭和32年に制作された故・高倉健さん主演の映画「鯨と斗う男」(津田不二夫監督)の上映会が2日、同市中央のアイトピアホールで開かれた。現在の上映機材に合わせて元のフィルムをデータ化するため、有志が寄付を募って実施にこぎ着けた。来場者はスクリーンによみがえった過去の古里の姿に感じ入りながら作品を楽しんでいた。
同作は捕鯨基地として活気があふれた鮎川を舞台とし、捕鯨船の若手銛(もり)撃ち役で高倉さんが主演。船員たちの男気のぶつかり合い、メロドラマが盛り込まれている。
鮎川や石巻市の繁華街のまち並みはもとより、クジラの捕獲や解体の様子、鯨まつりのにぎやかな情景なども登場。作り話でありながら、まつりは作品のために前倒しで開催したものを撮影しており、大洋漁業は捕鯨船や加工場を提供するなど記録資料としての価値も高い。
上映会は「鮎川に暮らした人や思いを寄せる人がともに作品を鑑賞する機会を」と、ノンフィクション作家の大島幹雄さんが代表を務める「石巻学プロジェクト」が企画。フィルムをデータ化するには約100万円が必要だったが、寄付の呼びかけに応じた地元内外の100件を超える協力で実現に至った。
3回の上映には地元のほか寄付を行った県外の人など約300人が来場。スクリーンに見覚えのある景色が映し出されるたび、観客からは驚きと懐かしさの混じった小さな声が漏れていた。
観賞した粟野勝義さん(89)=同市中央=は「作品が撮られたころ、鮎川を訪れたことがある。知っている店の名前もあり、ただ懐かしかった」と目を細めていた。
鮎川浜は東日本大震災の被害と復興事業で様変わりした。大島さんは「古里で過ごした記憶は心に残り続ける。文化財のように保存される映画を通じ、失った風景を共有し、集う機会が増やせれば」と話していた。鮎川では、建設中の観光物産交流施設が開業する今秋の上映を目指している。
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