石巻日日新聞

東北電力 女川1号機の廃炉決定

2号機の安全対策に注力 原発立地交付金は減額

石巻市 政治・経済 石巻日日新聞 2018年10月26日(金) 16時10分
運転開始から35年目で廃炉が決まった1号機

 東北電力は25日、運転停止中の女川原子力発電所1号機(出力52万4千キロワット)の廃炉を決めた。再稼働にかかる膨大なコストが要因であり、平成32年度までを完了目標とする2号機の安全対策工事などに経営資源を集中させる。同社が所有する原発で廃炉を決めたのは今回が初めて。原田宏哉社長らが県、石巻市、女川町に対し1号機の取り扱いについて説明した。

 1号機は昭和59年の運転開始から35年目を迎えた。新規制基準で運転期間の原則とする40年が近付く中、9月の定例記者会見で原田社長は「廃炉も選択肢の一つとして具体的な検討を進めている」と言及していた。

 運転期間は審査が通れば更新できるが、1号機は安全対策にかかる設備追加に必要な面積が不足しているなど、技術的な制約が多い。整備コストや再稼働した場合の収益性などを総合的に判断して25日の取締役会で廃炉の方針を決めた。

 同社は今後、国と原子力規制委員会に廃炉に向けた各種届け出を行う。本年中に提出する原発設置状況の変更に関する書類が国に承認されれば、正式に廃炉となる。

 解体などの工事計画は未策定だが、他社の前例では30―40年計画という。費用は昨年度末段階で約432億円と試算。原発立地自治体が受ける交付金も減額となり、具体的な金額は今後、国と県、各市町で調整される。

 方針を決めた25日には原田社長が村井嘉浩知事と面談し、1号機の取り扱いについて説明。また、立地自治体の石巻市と女川町には増子次郎副社長と女川原発の若林利明所長が訪問した。

 両市町の首長は公務で不在だったが、亀山紘市長は「廃炉は電力事業者が総合的に判断するもの。市は今後も安全対策の確実な実施を継続して要請していく」と談話を出した。

 須田善明町長は「廃炉による地域経済や住民への影響を精査していく。東北電力には廃炉を含め、安全確保を最優先とした作業の実施と住民への分かりやすい情報提供を求める」とした。

 石巻市役所で記者会見した若林所長は「経営資源を女川2、3号機と東通1号機に投入することで新規性基準の満足にとどまらない、より高い安全性を目指す」と語った。

 廃炉の発表で女川町からは「安全性を考えれば1号機は当然」との声が聞かれた。自営業の男性(70)は「交付金の減額も安全には代えられない。2、3号機は適宜の情報公開を願いたい」と求めていた。一方、町内で福祉関連の仕事に就く男性(55)は「判断が遅すぎた。町の避難計画の実現性も乏しく不安は拭えない」と指摘していた。

最終更新:2018年10月26日(金) 16時10分

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