石巻日日新聞

「鶴湯」が営業終了 石巻最後の公衆浴場 疲れ癒やし続けて92年

無料開放で感謝伝える

石巻市 社会 石巻日日新聞 2019年7月31日(水) 21時39分
最終日は常連客らが湯船を楽しんだ

 石巻市で唯一の公衆浴場「鶴湯」(つるのゆ)=同市住吉町=が30日で営業を終え、92年の歴史に幕を閉じた。最終日は浴場が無料開放され、多くの常連客がのれんをくぐり、古き良き昭和を象徴するたたずまいの中で最後の湯を楽しんだ。

 鶴湯は製材で出た廃材の利活用のため、昭和2年に創業。40年代には銭湯や公衆浴場が全盛期を迎え、石巻市でも10件以上が営業していた。その後、家庭風呂の普及で徐々に姿を消していった。

 旧北上川沿いの鶴湯は東日本大震災で被災したが、全国から訪れたボランティアの支援を受け、24年元日に再スタート。しかし、風呂を沸かす燃料となる重油タンクが耐用年数を迎え、修繕に膨大な費用もかかるため、営業終了を決めた。

 最終日は女将の杉山きよさん(78)がのれんを掲げると、待ちわびていた市民らが次々と訪れた。30年以上通い続けたという濱谷勝美さん(76)=同市南境=は「仕事帰りに利用してきた。伸び伸びできる湯船と庶民的な雰囲気が良かった」と惜しんだ。

 杉山さんは「多くの人に恵まれ、ここまでやってこられたことに感謝。その反面、閉店してしまうことは皆さんに申し訳ないとも感じる」と語った。震災後に関わった県外ボランティアも訪れ、杉山さんとの再会を喜ぶ姿もあった。

最終更新:2019年7月31日(水) 21時41分

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