旧門脇小震災遺構 部分保存へ工事費計上 今夏にも一部解体予定
亀山市長 方針変えず
石巻市 政治・経済 石巻日日新聞 2019年6月5日(水) 8時55分石巻市は6日開会の市議会定例会に提出する本年度の一般会計補正予算案に、旧門脇小学校校舎を東日本大震災の遺構として整備するための工事費を計上している。本校舎の両端を取り壊して中央部を部分保存する計画だが、住民の一部には全部をありのまま残すべきとの声が根強くある。亀山紘市長は3日の定例記者会見で「何を伝承するかが大事であり、校舎だけを伝承する訳ではない」として理解を求める考えだ。
旧門脇小は、津波火災の痕跡がある校舎中央部分を保存。安全性の問題から見学者を内部に入れないため観察棟を新設し、特別教室棟、体育館を改修して防災学習の場などにする。復興交付金を活用する時間的な制約から来年度内の完成を目指しており、市議会で予算が可決されれば、今夏に校舎の一部取り壊しに入る予定だ。
かどのわき町内会(本間英一会長)と一般社団法人3・11みらいサポートは昨年10月から3回、「遺構と地域のこれからを語る会」を開催。賛否両論あって保存決定まで20年を要した広島の原爆ドームなどの先例を学び、遺構がある将来のまちづくりを考えてきた。
本間会長ら住民有志は今年3月、部分保存を考え直すよう市に要望。市が平成27年度に行ったアンケート結果では解体の意向が多かったものの、2月に独自に行ったアンケートでは全体保存を望む回答者が多くあり、住宅再建をはじめとした復興が進んだことで「市民の考えが当初と変わってきている」と判断したためだ。
アンケートの再実施など住民側の要望に対して市はゼロ回答。校舎の工事が始まれば元に戻せない瀬戸際にあり、5月27日の語る会で本間会長らは「解体されるまでは、よりよいものにするための方法を皆さんと一緒に考えていきたい」と参加者に呼び掛けた。
亀山市長は3日の記者会見で「近くに南浜津波祈念公園が整備されることになり、あれだけの被害を伝承する施設が必要だった。校舎を見たくないという人に配慮して一部保存とした」と経緯を説明した。
その上で「5年ほどかけ議論を積み上げてきたのを改めて検討するのは無理がある。建物を残す、残さないではなく、何を伝承していくのかであれば住民と議論の余地がある」として方針を変えないことを強調した。
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