石巻日日新聞

長面 伝統の奇祭 スス塗って幸せ願うアンバサン

元住民たち再会の場に 善男善女の笑顔広がる

石巻市 教育・文化 石巻日日新聞 2月12日(月) 15時13分
高橋宮司が参列者にヘソビをつけていった

 石巻市長面にある北野神社末社・大杉神社(高橋範英宮司)で11日、伝統行事の「アンバサン」が行われた。現在は非可住地域となっているが、この日は年に一度、氏子をはじめ震災前まで同地区で暮らしていた住民たちが顔を合わせる場となっている。今年も約40人が参列し、“ヘソビ”と呼ばれるかまどのススを顔に塗り合って無病息災や大漁豊作を祈願した。

 茨城県から岩手県にかけた沿岸部の漁村地域に散在する大杉神社は「安波山(あんばさん)」とも呼ばれ、特に航海の安全や大漁の神として信仰されている。長面地区では300年以上の歴史がある例祭も「アンバサン」と親しみをもって呼んでいる。

 地域独自の習わしとして、ヘソビをつけた輪切りの大根を宮司から氏子、氏子から参加者にと押していき、身体健康や無病息災を祈願する。もとは嫁いできた女性にヘソビをつけていたが、震災前から過疎化に伴い参列者全員が対象となった。

 今年は神社総代、氏子青年会、元地域住民のほか東北大学の学生ら約40人が参加。集合場所から高台にある境内まで供え物を携えて1列になって参進した。神事は太鼓の打ち鳴らしに合わせ、厳かに進められた。

 玉串を捧げた代表者が祈願を終えると、例年通りに高橋宮司が直径7センチの大根を使って氏子らの頬や額にヘソビをつけていった。参列者同士でも塗り合いが始まり、境内には笑い声が広がった。

 その後、全員で海岸に向け、「安波大杉大明神。悪魔を祓うてヨーヤナ、ヨーヤ、ヨーヤ、ヨーヤナー。大漁大漁大漁ダー、満作満作満作ダー」と唱え言葉を三唱。餅や駄菓子をまいて締めくくった。

 結婚を機に長面に嫁いだ永沼容子さん(67)は「震災後は仮設住宅への入居で地域の人たちはばらばらになった。アンバサンは年1回でも顔を合わせられる良い機会」と知人たちとの久しぶりの再会を喜んだ。また今秋には復興公営住宅に入居することから「穏やかな年になってほしい」と願っていた。

 なお、今年から「ヘソビ大根守り」として、青首大根に似せたススつきの木も配られた。

最終更新:2月12日(月) 15時13分

新着記事