石巻日日新聞

イシノマキファーム×巻組 古民家拠点に農業体験受け入れ

石巻日日新聞 2017年1月28日(土)

 一次産業の担い手不足は、それを主産業とする地域にとって頭の痛い問題。解消に向けた取り組みが求められている中で、石巻市北上町では一般社団法人イシノマキ・ファーム(高橋由佳代表理事)と合同会社巻組(渡邊享子代表)が就農人員の確保に向けたプロジェクトを進めている。求職者らの自立支援をベースとしているのが特徴で、首都圏住民らへの就農プログラム提供との両輪で行っていく構想だ。空き家をこれらの拠点として活用し、ホップ栽培の地場産業化も目指していく。(阿部達人)

■自立支援と移住サポート両輪で
 イシノマキファームは、石巻市などで若年層の就労・就学支援を行うNPO法人Switch(スイッチ)の分社。スイッチでは昨年5月から石巻市東福田の農地約30アールを活用し、野菜を生産、販売している。さまざまな理由で職に就けていない人が自立に向かうための中間就労の場としており、実際に就職につながった例もある。

 こうした実績の上で、農業を中心に中間就労のみにとどまらない自立支援へと事業発展させていこうとイシノマキファームを10月に設立。助成に頼らず自ら収益を生み出し、利用者が賃金を得る形を目指すこととした。

 収益源として着目したのがビールの原料となるホップの栽培。近年、クラフトビールブームを背景に国産ホップの需要は高い。すでに東福田で試験栽培を終えており、作柄は良好だった。今後は新たに借り上げた北上地区の50アールの休耕地も使って栽培し、委託醸造から段階を踏んで石巻産ビールの自主生産と地場産業化を狙う。また、従来同様に野菜の栽培も行う。

 一方、都市部住民などへの農業体験を提供するのが巻組。プログラムは本格的に農業に就く前のステップとしての長期体験と、農業や地域に関心のある人、リフレッシュを目的とする人を受け入れる短期ツアーなどを用意する。

 利用者はファーム所有の農地のほか、地域農家にも赴き作業。繁忙期の人員、永続的な担い手の確保など、農家のニーズとマッチングさせ、サポートに役立てる。

 これらの事業の拠点となるのは、北上町女川の古民家を改修したシェアハウス「AOYA(アオヤ)」。自立支援の対象者には多様な人との共同生活で心の健康を図るとともに、就農希望者には住居確保を支援する。

 11月には都市部の20-60代男女をモニター的に短期で受け入れ、好評を得た。またスタッフがアオヤに住みながら住民に説明と交流を重ね、事業の展開に欠かせない関係性を構築しているという。

 ファームの高橋代表理事は「多様性を認め合い共生する形をつくり出すとともに、地域と密接に関わった就農に向けたい」と話す。

 巻組の渡邊代表は「単身高齢者や空き家の多いこの地域で、若者を受け入れることが持続可能性を担保するきっかけになる」と語っていた。

 春にかけて北上地区の農地の整備やモニターツアー、民泊施設としてのアオヤの改修を進め、8月ごろから宿泊の受け入れを始める見込みだ。

【写真】人材育成の拠点となるシェアハウスAOYA

最終更新:2017年1月28日(土)

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